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金融商品会計を学ぶ 【第22回】「ヘッジ会計③」

筆者:阿部 光成

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金融商品会計学ぶ

【第22回】

「ヘッジ会計③」

 

公認会計士 阿部 光成

 

前回に引き続き、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)におけるヘッジ会計について述べる。

なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅰ リスク管理方針文書の記載事項

金融商品会計基準等は、ヘッジ会計を実行するに際して、ヘッジ取引時において、ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが客観的に認められることを要件として規定している(金融商品会計基準31項(1)、金融商品実務指針144項)。

リスク管理方針は、経営者が企業活動においてさらされているリスクの種類と内容を識別し、これらを許容し得るレベルに管理するために策定したものであって、取締役会等の意思決定機関において、原則として毎期、承認を受け文書化したものである(金融商品実務指針315項)。

リスク管理方針として、少なくとも、管理の対象とするリスクの種類と内容、ヘッジ方針、ヘッジ手段の有効性の検証方法等のリスク管理の基本的な枠組みを文書化し、企業の環境変化等に対応して見直しを行う必要がある(金融商品実務指針147項)。

企業がさらされるリスクには、為替、金利、債券、株式等の市場リスク、信用リスク、リーガル・リスク、システム・リスク、事務リスク等、様々なものが考えられ、リスク管理方針にはこれらが包括的に定められるものと思われる。

ただし、ヘッジ会計の適用のため文書化を要するリスクは、為替、債券、株式等の市場リスク、信用リスクや金利リスクのように市場価格その他の変動に対する資産又は負債等の時価やキャッシュ・フローの変化が合理的に定量化できるリスクである(金融商品実務指針315項)。

リスク量は、通常、相場変動に伴う資産又は負債等の時価又はキャッシュ・フローの変化として定義される(金融商品実務指針316項)。

 ヘッジ方針

リスク・カテゴリー別のヘッジ比率、ヘッジ対象の識別方法、リスク・カテゴリー別のヘッジ手段の選択肢などを記載することが必要である。

 ヘッジ手段の有効性の検証方法

  • ヘッジ対象とするリスク・カテゴリーとの価格変動の相関関係の測定方法のほか、当該ヘッジ手段に十分な流動性が期待できるか否かの検討も含めることが望ましい。
  • ヘッジの有効性テストの結果は、同一ヘッジ取引につきその後のヘッジに係る事前テストに反映しなければならない。

ヘッジ取引はヘッジ対象のリスクを相殺することにより、その後の相場変動による損失発生を減殺させると期待されるが、一方で、機会利益を喪失させるなどヘッジ・コストを伴うものであり、リスクに対してどのようなヘッジ行動を取るかは、当然に経営上の判断を要する事項である(金融商品実務指針314項)。

このため、ヘッジ行動が取締役会等の経営意思決定機関で承認されたリスク管理方針として文書化されたヘッジ方針に基づいて行われ、かつ、ヘッジ取引時にあらかじめ定められたルールに従ってヘッジとして指定され、ヘッジの終了時までヘッジ対象と対応させて定期的又は随時にヘッジの有効性を評価するような内部統制が不可欠となる(金融商品実務指針314項)。

次のことにも注意が必要である(金融商品実務指針314項)。

 あるリスク・カテゴリーに対するヘッジ手段として新たなデリバティブを用いる場合には、事前テストとして、その基礎商品の相場変動等に対する価格変動特性とヘッジ対象カテゴリーの価格変動特性の類似度合い、ヘッジ損益を実現させるために十分な市場の流動性が期待できるか等を分析し、ヘッジ手段としての有効性を予測しておくことが必要である。

 ヘッジ手段の有効性の事前予測の方法としては、金融商品実務指針156項に示した比率分析の手法のほか、回帰分析の利用も考えられる。

 

Ⅱ 内部統制組織

経営者は、リスク管理方針に基づいて経営組織を整備し、各組織にリスクを取る権限とその許容限度を付与してリスク管理の責任を割り当て、各リスク・カテゴリーに対するヘッジ手段の選定、ヘッジ対象の識別、ヘッジ指定並びに事後管理の仕組み、各組織別及び企業全体のリスクの状況のモニタリングの仕組み等を含む内部統制組織と諸規定を定めて、これらを運用していくことが求められる(金融商品実務指針317項)。

デリバティブ取引を活発に行う企業の場合、内部統制組織としてデリバティブ取引を実行する部門(フロント・オフィス)とこれとは別に分離独立したリスク管理を行う部門(バック・オフィス)が必要である(金融商品実務指針318項)。

 フロント・オフィスは、一般的に経営者に対し社内規定に従い事前に取引目的(ヘッジ目的又はトレーディング目的)、取引枠、相手先、損失限度等の市場リスクに関する申請を行う。

 バック・オフィスは経営者に定期的にデリバティブ取引の実行状況を、更にヘッジ目的取引についてはそのヘッジ有効性を確認し報告しなければならない。

 バック・オフィスはデリバティブ取引の口座開設、基本契約の締結、成約確認、資金決済及び受渡し、残高確認、ポジションの状況等に関する管理資料を作成し、更にヘッジ関係が有効に機能しているかどうかを評価するシステムを持つことが必要である。

 企業がトレーディング目的でデリバティブ取引を行う場合は、ヘッジ目的のデリバティブ取引と明確に区分できる管理体制を取っていることが重要である。

(了)

「金融商品会計を学ぶ」は、隔週で掲載されます。

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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