公開日: 2014/10/09 (掲載号:No.89)
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減損会計を学ぶ 【第18回】「減損損失の配分」

筆者: 阿部 光成

減損会計を学ぶ

【第18回】

「減損損失の配分」

 

公認会計士 阿部 光成

 

減損会計では、減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とすることとされている(「固定資産の減損に係る会計基準」(以下「減損会計基準」という)、二3)。

減損損失は、損益計算書において、原則として、特別損失として表示される(減損会計基準、四2)。

貸借対照表においては、減損処理を行った資産の貸借対照表における表示は、原則として、減損処理前の取得原価から減損損失を直接控除し、控除後の金額をその後の取得原価とする形式で行うこととなる(減損会計基準、四1)。

文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅰ 減損損失の配分

貸借対照表における減損損失の表示については前述のとおりであり、資産グループについて認識された減損損失は、当該資産グループの各構成資産に配分することになる(減損会計基準、二6(2))。

減損損失の配分の方法としては、帳簿価額に基づいて各構成資産に比例配分する方法が考えられるが、各構成資産の時価を考慮した配分等他の方法が合理的であると認められる場合には、当該方法によることができるとされている(「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」四2(6)②、「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号。以下「減損適用指針」という)26項、105項)。

まとめると次の方法が考えられる。

 各構成資産の帳簿価額に基づいて比例配分する方法

 各構成資産の時価を考慮して配分する方法

 その他合理的な配分方法

【設例】

次の資産グループについて減損損失を計上した。各資産の帳簿価額に基づいて、減損損失を比例配分する。

(出所:監査法人トーマツ編『Q&A減損会計適用指針における会計実務』(清文社、2004年4月)134ページをもとに作成)

 

Ⅱ 合理的な配分方法

減損適用指針105項は、減損損失を配分する合理的な方法には、共用資産を加えることによって算定される減損損失の増加額の配分の考え方(減損適用指針48 項(5))にならって、各構成資産に配分される減損損失は、当該資産グループの構成資産の全部又は一部の正味売却価額が容易に把握できる場合には、当該正味売却価額を下回る結果とならないように、合理的な基準により、他の各構成資産に減損損失を配分することができることも含まれると規定している。

減損適用指針48 項(5)は次のように規定している。

 各資産又は資産グループの回収可能価額が容易に把握できる場合には、当該回収可能価額を下回る結果とならないように、当該超過額を、各資産又は資産グループの帳簿価額と回収可能価額の差額の比率等により配分する。

 各資産又は資産グループの回収可能価額が容易に把握できない場合には、当該超過額を、各資産又は資産グループの帳簿価額の比率等により配分する。

 ただし、各資産又は資産グループの一部の回収可能価額が容易に把握できる場合には、当該回収可能価額を下回る結果とならないように、合理的な基準により、回収可能価額が容易に把握できない構成資産に減損損失を配分することができる。

 

Ⅲ 簡便的な取扱い

減損適用指針106項は、資産グループ全体において処理する方法(例えば、各構成資産の減価償却は、減損損失認識前の帳簿価額に基づいて行い、資産グループとしての減損損失累計額は、減価償却の実施にあわせて、将来キャッシュ・フローの見積期間で取り崩すような方法)を簡便的に認めるべきではないかという見解もあったことについて述べている。

しかしながら、そのような簡便的な方法は、次の理由から適当ではないとし、認められていない。

 簡便的な方法が、資産グループについて認識された減損損失を合理的な方法により当該資産グループの各構成資産に配分すること(減損会計基準、二6(2))にはならないこと

 減損処理後の実務上の負担については、すでに減損損失の戻入れは行わないことの考慮にも含まれていること

 仮に簡便的な方法を用いたとしても、構成資産を部分的に売却したり除却したりする際には、資産グループとしての減損損失累計額を合理的な方法により配分する必要があること

ただし、減損適用指針106項は、次の方法について述べているので、実務上、注意が必要である。

(a) 資産グループの帳簿価額のほとんどが主要な資産の帳簿価額である場合のように、帳簿価額に基づく比例配分を行っても、資産グループ全体において処理する方法(上記参照)によっても、その後の会計処理の結果が大きく相違しないと想定されるときには、実務上、資産グループ全体において処理する方法も考えられる。

(b) 帳簿価額に基づく比例配分を行っても、当該資産グループの帳簿価額のうち、その帳簿価額が大きな割合を占めることとなる複数の資産にのみ帳簿価額に基づく比例配分を行っても、その後の会計処理の結果が大きく相違しないと想定されるときには、実務上、その帳簿価額が大きな割合を占めることとなる複数の資産にのみ帳簿価額に基づく比例配分を行う方法も考えられる。

 

Ⅳ 建設仮勘定

資産グループが複数の建設仮勘定から構成されている場合、資産グループについて認識された減損損失は、資産グループの帳簿価額から控除するが、減損損失の測定時には各建設仮勘定に配分せず、完成時にそれまでの総支出額等の合理的な方法に基づいて配分することになる(減損適用指針27項)。

(了)

「減損会計を学ぶ」は、隔週で掲載されます。

減損会計を学ぶ

【第18回】

「減損損失の配分」

 

公認会計士 阿部 光成

 

減損会計では、減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とすることとされている(「固定資産の減損に係る会計基準」(以下「減損会計基準」という)、二3)。

減損損失は、損益計算書において、原則として、特別損失として表示される(減損会計基準、四2)。

貸借対照表においては、減損処理を行った資産の貸借対照表における表示は、原則として、減損処理前の取得原価から減損損失を直接控除し、控除後の金額をその後の取得原価とする形式で行うこととなる(減損会計基準、四1)。

文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅰ 減損損失の配分

貸借対照表における減損損失の表示については前述のとおりであり、資産グループについて認識された減損損失は、当該資産グループの各構成資産に配分することになる(減損会計基準、二6(2))。

連載目次

「減損会計を学ぶ」(全24回)

【参考記事】
「税効果会計を学ぶ」(全24回)

【参考記事】
「金融商品会計を学ぶ」(全29回)

筆者紹介

阿部 光成

(あべ・みつまさ)

公認会計士
中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂第2版〕』(編著、商事法務)がある。

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