Profession Journal » 税務・会計 » 会計 » 解説 » 財務会計 » 金融商品会計 » 金融商品会計を学ぶ 【第18回】「デリバティブ取引」

金融商品会計を学ぶ 【第18回】「デリバティブ取引」

筆者:阿部 光成

文字サイズ

金融商品会計学ぶ

【第18回】

「デリバティブ取引」

 

公認会計士 阿部 光成

 

今回は「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)におけるデリバティブ取引について述べる。

なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅰ デリバティブ取引の定義

デリバティブ取引は、契約上の期日に純額又は実質的に純額で、現金、その他の金融資産又はデリバティブを授受する権利もしくは義務が生じる契約である(金融商品実務指針218項)。

金融商品会計基準は、デリバティブ取引を、先物取引、先渡取引、オプション取引、スワップ取引及びこれらに類似する取引をいうとし、具体的な資産及び負債項目によって、適用範囲を示している(金融商品会計基準4項、52項)。

一方、金融商品実務指針は、デリバティブとは、次のような特徴を有する金融商品であるとしている(金融商品実務指針6項)。

(1) その権利義務の価値が、特定の金利、有価証券価格、現物商品価格、外国為替相場、各種の価格・率の指数、信用格付・信用指数、又は類似する変数(これらは基礎数値と呼ばれる)の変化に反応して変化する①基礎数値を有し、かつ、②想定元本か固定もしくは決定可能な決済金額のいずれか又は想定元本と決済金額の両方を有する契約である。

(2) 当初純投資が不要であるか、又は市況の変動に類似の反応を示すその他の契約と比べ当初純投資をほとんど必要としない。

(3) その契約条項により純額(差金)決済を要求もしくは容認し、契約外の手段で純額決済が容易にでき、又は資産の引渡しを定めていてもその受取人を純額決済と実質的に異ならない状態に置く。

 

Ⅱ デリバティブ取引の会計処理と時価

1 会計処理

デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務は、原則として時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は、ヘッジに係るものを除いて、当期の純損益として処理する(金融商品会計基準25項、金融商品実務指針101項)。

ヘッジ会計を適用しているデリバティブ取引については、原則として、時価評価されているヘッジ手段に係る損益又は評価差額を、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで純資産の部において繰り延べる方法による(金融商品会計基準32項)。

2 上場デリバティブ取引の時価

デリバティブ取引は、取引により生じる正味の債権又は債務の時価の変動により保有者が利益を得又は損失を被るものであり、投資者及び企業双方にとって意義を有する価値は当該正味の債権又は債務の時価に求められると考えられている(金融商品会計基準88項)。

時価の算定に関しては、次のことに注意する(金融商品実務指針101項)。

 取引所に上場しているデリバティブ取引により生じる債権及び債務は、貸借対照表日における当該取引所の最終価格(終値又は終値がなければ気配値(公表された売り気配の最安値又は買い気配の最高値又はそれらがともに公表されている場合にはそれらの仲値))を用いて時価評価する。

 同日において最終価格がない場合には同日前直近における最終価格を用いる。

 委託手数料等取引に付随して発生する費用は時価に加味しない。

3 非上場デリバティブ取引の時価

取引所の相場がない非上場デリバティブ取引の時価は、市場価格に準ずるものとして合理的に算定された価額が得られればその価額とする(金融商品実務指針102項)。

合理的に算定された価額は、一般に、以下のいずれかの方法を用いて算定する。

なお、金融商品実務指針103項に、時価評価における留意事項が規定されているので、実務の適用に際しては、注意が必要である。

◆  ①  ◆

〔方法〕
インターバンク市場、ディーラー間市場、電子売買取引等の随時決済・換金ができる取引システムでの気配値による方法

〔内容〕

  • 取引所以外でも、いわゆる流通市場ないしセカンダリーマーケットでデリバティブ取引の気配値を入手できる場合がある。
  • 複数の市場で気配値を入手できるデリバティブ取引については、会社が通常使用する市場又はより活発な市場での価格を使用する。
  • 保有しているデリバティブ取引そのものに気配値がない場合でも、類似するデリバティブ取引に気配値がある場合には、当該気配値に契約上の差異等を調整して、時価を見積もる。

◆  ②  ◆

〔方法〕
割引現在価値による方法

〔内容〕

  • 類似する取引に気配値のないデリバティブ取引については、将来キャッシュ・フローを見積もり、それを適切な市場利子率で割り引くことにより現在価値を算定する。
  • 将来キャッシュ・フローの見積りは、一般に、契約上の諸条件を将来の各期間に展開し、信用リスク等のリスクを加味することによって行う。
  • 適切な市場利子率は、一般に、短期の利子率については先物市場の相場又は銀行間短期資金貸借の気配値を参考にし、また、長期の利子率については金利スワップの気配値等を参考にして各将来時点の市場利子率を算定し、各将来時点を補間することによりイールドカーブを描いて見積もる。
  • 信用リスク等のリスクを将来キャッシュ・フローに反映させることができる場合には、市場利子率はリスク・フリーに近いものを使用する。
  • リスクを将来キャッシュ・フローに反映させることが実務的に困難な場合には、市場利子率をリスク要因で補正する。

◆  ③  ◆

〔方法〕
オプション価格モデルによる方法

〔内容〕

  • オプション取引については、ブラック・ショールズ・モデル等のオプション価格モデルを用いて時価を算定する。

4 デリバティブ取引の認識

デリバティブ取引については、契約上の決済時ではなく契約の締結時にその発生を認識しなければならない(金融商品会計基準7項、55項)。

これは、金融資産又は金融負債自体を対象とする取引については、当該取引の契約時から当該金融資産又は金融負債の時価の変動リスクや契約の相手方の財政状態等に基づく信用リスクが契約当事者に生じることから、契約締結時においてその発生を認識するものである(金融商品会計基準55項)。

 

Ⅲ 公正な評価額を算定することが極めて困難と認められるデリバティブ取引の会計処理

非上場デリバティブ取引の時価評価に当たっては最善の見積額を使用するが、取引慣行が成熟していないため内容が定まっていない一部のクレジット・デリバティブ、ウェザー・デリバティブ等で公正な評価額を算定することが極めて困難と認められるデリバティブ取引については、取得価額をもって貸借対照表価額とする(金融商品実務指針104項)。

(了)

次回は2016/4/21の公開となります。

連載目次

「金融商品会計を学ぶ」(全29回)

【参考記事】
「減損会計を学ぶ」(全24回)

【参考記事】
「税効果会計を学ぶ」(全24回)

このエントリーをはてなブックマークに追加

筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

関連書籍

関連セミナー/研修

Profession Journal » 税務・会計 » 会計 » 解説 » 財務会計 » 金融商品会計 » 金融商品会計を学ぶ 【第18回】「デリバティブ取引」

Copyright ©2012- Profession Network Co.,Ltd. All Rights Reserved.

Scroll to top
Go to home