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税効果会計を学ぶ 【第14回】「その他有価証券の評価差額の取扱い②」

筆者:阿部 光成

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税効果会計を学ぶ

【第14回】

「その他有価証券の

評価差額の取扱い②」

 

公認会計士 阿部 光成

 

前回に続き、その他有価証券の評価差額に係る税効果会計の取扱いについては、「税効果会計に関するQ&A」(以下「税効果Q&A」という)にも規定がある。

税効果Q&AのQ3は、過年度にその他有価証券の減損処理を実施し(税務上は有税処理)、その後、時価が上昇しその他有価証券評価差額金(評価差益)が発生した場合の税効果会計の適用について述べている。

そこで今回は、このQ3について取り上げることとする。
なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅰ 税効果Q&AのQ3の基本的な考え方

税効果Q&AのQ3では、次の前提条件において、税効果会計の取扱いを示している。

【設例】

1 前提条件

(1) 前期末において、帳簿価額1,000のその他有価証券(投資有価証券)が、時価400に下落したため、600の減損処理を行った。

(2) 当期において、当該その他有価証券の時価が600に上昇したため、会計上200のその他有価証券評価差額金(評価差益)が発生した。

(3) 実効税率は40%とする。

税効果会計は資産負債法を採用しており、貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額との差額を「一時差異」と定義し、当該一時差異について繰延税金資産又は繰延税金負債を認識する会計処理である(「税効果会計に係る会計基準の設定に関する意見書」Ⅲ、1、「税効果会計に係る会計基準」第二、一、2、第二、二、1)。

税効果Q&AのQ3は資産負債法の考え方で整理しており、設例における減損処理したその他有価証券に係る当期末の将来減算一時差異は、会計上の簿価(貸借対照表価額)600と税務上の簿価1,000との差額である400となる。

この数値の関係については、資産負債法で考えて、減損処理により生じた将来減算一時差異600と、その後の時価上昇に伴う将来減算一時差異200の戻入という関係で整理されている。
つまり、一時差異が同一の有価証券から生じているため、減損処理後の時価上昇に伴い発生する評価差益は、将来加算一時差異ではなく、将来減算一時差異の戻入という整理である。

 

Ⅱ 会計処理

前述のように整理すると、過年度にその他有価証券の減損処理(税務上は有税処理)を実施し、減損処理後に、その銘柄の時価が上昇して、その他有価証券評価差額金(評価差益)が発生した場合には、期末における時価の回復が減損前の価額に達するまでは、次のように取り扱うことになる。

1 投資有価証券の減損処理に関して、前期に繰延税金資産を計上していたケース

① 前期末

② 当期

●その他有価証券評価差額金(評価差益)200の発生(将来減算一時差異200の戻入)により繰延税金資産80を取り崩す。

●回収可能性の判断及び税務処理に変化がないことを前提としている。

2 投資有価証券の減損処理に関して、前期に繰延税金資産を計上しなかったが、当期に繰延税金資産を計上できると判断されたケース

① 前期末

② 当期

●減損処理により生じた将来減算一時差異は、前期申告加算を行った600であるので、その税効果は240となる。

●当期に、この将来減算一時差異の回収可能性があると判断された場合は、繰延税金資産を計上することになり、貸方に法人税等調整額240を計上する。

●その他有価証券評価差額金(評価差益)200の発生(将来減算一時差異200の戻入)により繰延税金資産80を取り崩す。

3 投資有価証券の減損処理に関して、前期に繰延税金資産を計上しなかったが、当期も繰延税金資産を計上できないと判断されたケース

① 前期末

② 当期

●減損処理により生じた将来減算一時差異は、前期申告加算を行った600であるので、その税効果は240である。

●当期も、当該将来減算一時差異の回収可能性がないと判断された場合は、繰延税金資産を計上することはできない。

●その他有価証券評価差額金(評価差益)200(将来減算一時差異200の戻入)が発生しているが、取り崩すべき繰延税金資産が存在しないため、評価差益に関する税効果の処理は不要となる。

4 その他の留意点

税効果Q&AのQ3は、「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」(監査委員会報告第70号)に従い、その他有価証券の評価差額を評価差益と評価差損とに区分せず、各合計額を相殺した後の純額の評価差益又は評価差損について税効果会計を一括して適用することができるが、減損処理したその他有価証券に関しては、個別の銘柄ごとにスケジューリングを行うことが必要になるため、それ以外のその他有価証券に係る評価差額と一括して税効果会計を適用することはできないと考えられると述べている。

このため、前期以前に減損処理したその他有価証券については、原則どおり、減損処理後の株価の変動を踏まえて、個々の銘柄ごとに税効果会計を適用することになると述べている。

(了)

「税効果会計を学ぶ」は、隔週の掲載となります。

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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