酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第73回】
「国語辞典から読み解く租税法(その1)」
中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦
はじめに
憲法84条は「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」として、いわゆる租税法律主義を定め、国民の経済生活に法的安定性と予測可能性を与えることとしている。その趣旨からすれば、納税義務者及び課税標準等の課税要件や租税の徴収手続は法律によって定められていなければならず、また、課税要件については、その内容が多義的でなく明確かつ一義的に定まっていることが望ましい。
しかし、租税が対象とする納税者の社会生活上の事象は多種多様であり、特に納税者の自由な経済活動により多様な形態の事業、取引等がなされることに鑑みると、それら全てを法律により一義的に規定し尽くすことは不可能であって、その内容の明確性には自ずと限界がある。
したがって、租税法規の用語の解釈は、原則として、定義規定がある場合にはそれにより、そうでない場合には日本語の通常の用語例によって文理解釈して規定の意味内容を明確にすべきであるが、それができない場合には、当該規定の趣旨・目的、定め方、経緯、租税負担の公平性及び相当性等を総合考慮して、その意味内容を合理的に解釈する必要がある。
このように述べるのは、長崎地裁平成28年5月10日判決(税資266号順号12852)である。
本稿では、上記判決にいうところの「日本語の通常の用語例」に着目することとし、国語辞典から租税法を読み解いてみたい。
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