公開日: 2024/01/11 (掲載号:No.551)
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酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第127回】「消費税法判例解析講座(その4)」

筆者: 酒井 克彦

酒井克彦の

〈深読み◆租税法〉

【第127回】

「消費税法判例解析講座(その4)」

 

中央大学法科大学院教授・法学博士
酒井 克彦

 

《(その1)はこちら》

はじめに

1 消費税法30条7項の「保存」の意義(上)

(1) 事案の概要

(2) 争点

(3) 判決の要旨

(4) 解説

イ 消費税法58条

ロ 税制改革法10条

《(その2)はこちら》

ハ 帳簿と記録の意義

《(その3)はこちら》

ニ 消費税法30条8項にいう「帳簿等」

ホ 一般的記帳義務の内容を規定する手続要件かそれとも仕入税額控除の適用要件か

ヘ 消費税法30条7項は仕入税額控除の適用要件か

ヘ 消費税法30条7項は仕入税額控除の適用要件か(承前)

上記の点は、東京地裁平成11年3月30日判決(訟月46巻2号899頁)(※1)からも判然とする。

(※1) 判例評釈として、西山由美・税務事例32巻9号1頁(2000)、畑山茂樹・税務事例31巻7号20頁(1999)、高正臣・税通57巻2号90頁(2002)など参照。

同地裁は、次のように説示する。

租税関係法令を含め行政法規は行政手続を念頭において規定される結果、訴訟上の要件事実の分類を意識した表現が用いられていない場合もあるものと解されるが、法30条7項は、法定帳簿等を「保存しない場合」に仕入税額控除をしない旨を規定し、「保存する場合に限り」仕入税額控除をする旨を規定するものではなく、税額控除について規定する所得税法95条4項又は法人税法69条7項の「書類の添付がある場合に限り」との文言と対比しても、これを単なる表現上の差異と解することはできず、さらに、法30条7項ただし書に規定する保存することができなかったことについての「災害その他やむを得ない事情」を税務署長に対して立証したときは、同項本文に規定された仕入税額控除の消極要件の効果が覆滅され、その積極要件(法30条1項)の立証により仕入税額控除が肯定される構造となっているところ、右「やむを得ない事情」を立証すべき者は納税者とされており、この立証責任を訴訟において転換する理由もないと考えられるから、その前提となる「法定帳簿等を保存しない」事実の立証は課税庁にあると解されるのであって、訴訟における攻撃防御方法としても、この立証責任を別異に解すべき理由はない。

ト 仕入税額控除の実質的権利性

しばしば、消費税法は仕入税額控除を権利として規定していないと論じられる。

例えば、西山由美教授は、「日本の消費税法では、仕入税額控除をそもそも権利として位置づけていないために、請求権の行使時期に関する規定はない。確定申告に関する規定(消費税法45条1項)において、事業者は課税期間中に国内で行った課税資産の譲渡等に係る課税標準の合計額(課税標準額)に対する消費税額と、当該課税期間中に国内で行った課税仕入れに係る支払対価の金額に108分の6.3を乗じた金額(同法30条1項)を記載することが定められているのみである。」とされる(※2)。

(※2) 西山由美「消費課税におけるインボイスの機能と課題:EU域内の共通ルールと欧州司法裁判所判例を素材として」法学新報123巻11=12号127頁(2017)。

また、仕入税額控除があくまでも税額控除とされていて、課税標準は売上であることからすれば、現在の消費税は売上税としての性質を有するものであるとの議論が展開されているように思われる。

例えば、金子友裕教授は、日本の消費税を、賦課課税かそれとも取引高税かという見地から捉えた場合、最高裁平成16年12月20日第二小法廷判決(集民215号1005頁)に付された滝井繁男裁判官の反対意見が、仕入税額控除を「単なる申告手続上の特典ではない」と位置付けていることを反対解釈し、「我が国の消費税法は、仕入税額控除を『単なる申告手続き上の特典』のように位置付けていることになり、取引高税(aモデル)に恩典的な仕入税額控除を含めたものとして捉えている」と論じられる(※3)。

(※3) 金子友裕「消費税法における仕入税額控除の考察」税法学585号3頁(2021)。

また、今村隆教授は、「仕入税額控除を税額控除のbenefitにとどめている。そうすると、共通対応課税仕入れに区分することにより、仕入税額控除が一部遮断されるとしてもあくまでもbenefitの問題にとどま〔る〕」とされる(※4)。かように、仕入税額控除が権利として規定されていないことや、税額控除に置かれている点には十分な関心を寄せるべきであろう。

(※4) 今村隆・ジュリスト1563号134頁(2021)。

しかしながら、そのような消費税法の構造が認められるとしても、そうであるからといって、仕入税額控除に関して、税制改革法の理念が消費税法に承継されていないとみるべきなのであろうか。再説するが、税制改革法10条2項では、「消費税は、事業者による商品の販売、役務の提供等の各段階において課税し、経済に対する中立性を確保するため、課税の累積を排除する方式によるもの〔下線筆者〕」とする考え方が掲げられているのである。

消費税法上の仕入税額控除が否認要件として位置付けられるとする卑見を前提とすれば、一定の要件が充足されない限り仕入税額控除は否認されないという建付けであることになる。

別言すれば、原則と例外の関係に当てはめると、仕入税額控除の適用は原則であり、例外的に一定の否認要件が充足されると同控除が受けられなくなるという構造である。帳簿・請求書等が不保存でない限り、事業者は仕入税額控除を受けることができると考えるべきなのではなかろうか(なお、ここにいう帳簿・請求書等の不保存の中には、帳簿・請求書等が法定要件を充足していないことをも包摂される。)。

この点は、帳簿書類等の不存在についての主張・立証責任が課税庁側に負わされているという点からも判然とするのである。このように考えると、仕入税額控除の否認には一定のハードルが用意されているというべきである。

もっとも、平成9年度税制改正以前には、「帳簿又は請求書等」の保存がない場合に仕入税額控除の適用がないとされていた消費税法30条7項は、同年の税制改正において、「帳簿及び請求書等」の保存がない場合に仕入税額控除の適用がない旨に改正された。すなわち、帳簿だけの不保存では足りず、請求書等の不保存についても課税庁側は主張・立証をしなければならなくなったのである。一般的に、そのような理解はされていないようであるが、文理に忠実に解釈すれば、仕入税額控除の否認要件が厳しいものとなったとみることができるのである。このように考えると、必ずしも仕入税額控除の否認のハードルが緩和されたとだけみるのは正解とはいえまい。

あくまでも、平成9年度税制改正前は、帳簿「又は」請求書等の保存がないとの主張立証に成功すれば、課税庁側は仕入税額控除の適用を否認することができたのであるが、同年度改正によって、帳簿「及び」請求書等の両方の不存在の主張立証に成功しなければ、仕入税額控除の適用を否認することができなくなったのである(そのことを考慮に入れる必要があると思われるが、この点については、別に論稿を用意することとしたい。)。

チ 本件事案における「保存」

このように、帳簿書類等の保存に係る主張立証については課税当局側に課されていることからすれば、課税庁は、帳簿書類等が存在しないことに対する主張立証責任を負っているということになる。しかし「存在しない」ことの証明とは、いわば「悪魔の証明」であるといってもよい。物が存在しないという点についての証明は事実上不可能であるといってもよいからである。

そこで、この規定を意味のあるものとするには、かかる主張立証活動について一定の緩和が用意されるべきであるということにもなろう。このままの主張立証責任の分配論では、そもそも証拠との距離が遠い税務当局側に保存がないこと、すなわち悪魔の証明に係る責任を課すこととなり、あまりにも均衡を欠くともいえるからである。

その主張立証責任を緩和するためには、例えば、消費税法30条7項にいう帳簿・請求書等の「保存」という概念の意味内容に、帳簿・請求書等の「提出」を読み込ませることとなれば、「保存」のないことに対する主張立証責任が過度に重すぎるという問題は一応解決できるし、このように解せば、悪魔の証明問題も解決することができることになる。

しかしながら、「保存」という概念に「提出」なる意味を読み込ませることは、文理解釈上無理があるといわざるを得ない。そこで、本連載の始めに確認した最高裁平成16年12月16日第一小法廷判決(以下「最高裁平成16年判決」ともいう。)もそのような安易な解釈論に導かれることを避け、「保存」の意味を、あくまでも日本語として通常理解し得る「保存」の意味の範囲内において解釈を展開しているのである。すなわち、「保存」の状態論に持ち込んでいるといってもよいと思われる。

最高裁平成16年判決は、消費税法30条7項の「保存」について、如何なる状態で「保存」することを指すのかという点から議論を展開し、「税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存」することを説示したのである。「保存」にもさまざまな態様による保存があり得る中、消費税法が予定している「保存」については、適宜にこれを提出できる「状態での保存」と読み込むことによって、証拠との距離の遠い課税庁にも主張立証を可能なものとして「保存」の意義を解釈したとみることができるのではなかろうか。

このような考察の上で最高裁平成16年判決を再読すると、同最高裁は、「法62条に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は、法30条7項にいう『事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合』に当た〔る〕」こととなり、その場合には仕入税額控除が否認されることになる。税務当局がかかる立証活動に成功すると仕入税額控除は否認されることになるのであるが、他方で、「事業者が災害その他やむを得ない事情により当該保存をすることができなかったことを証明」することができれば、仕入税額控除が否認されることを障害することになると説示していると解することができるのではなかろうか。

(了)

「酒井克彦の〈深読み◆租税法〉」は、毎月第2週に掲載されます。

酒井克彦の

〈深読み◆租税法〉

【第127回】

「消費税法判例解析講座(その4)」

 

中央大学法科大学院教授・法学博士
酒井 克彦

 

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はじめに

1 消費税法30条7項の「保存」の意義(上)

(1) 事案の概要

(2) 争点

(3) 判決の要旨

(4) 解説

イ 消費税法58条

ロ 税制改革法10条

《(その2)はこちら》

ハ 帳簿と記録の意義

《(その3)はこちら》

ニ 消費税法30条8項にいう「帳簿等」

ホ 一般的記帳義務の内容を規定する手続要件かそれとも仕入税額控除の適用要件か

ヘ 消費税法30条7項は仕入税額控除の適用要件か

ヘ 消費税法30条7項は仕入税額控除の適用要件か(承前)

上記の点は、東京地裁平成11年3月30日判決(訟月46巻2号899頁)(※1)からも判然とする。

(※1) 判例評釈として、西山由美・税務事例32巻9号1頁(2000)、畑山茂樹・税務事例31巻7号20頁(1999)、高正臣・税通57巻2号90頁(2002)など参照。

同地裁は、次のように説示する。

租税関係法令を含め行政法規は行政手続を念頭において規定される結果、訴訟上の要件事実の分類を意識した表現が用いられていない場合もあるものと解されるが、法30条7項は、法定帳簿等を「保存しない場合」に仕入税額控除をしない旨を規定し、「保存する場合に限り」仕入税額控除をする旨を規定するものではなく、税額控除について規定する所得税法95条4項又は法人税法69条7項の「書類の添付がある場合に限り」との文言と対比しても、これを単なる表現上の差異と解することはできず、さらに、法30条7項ただし書に規定する保存することができなかったことについての「災害その他やむを得ない事情」を税務署長に対して立証したときは、同項本文に規定された仕入税額控除の消極要件の効果が覆滅され、その積極要件(法30条1項)の立証により仕入税額控除が肯定される構造となっているところ、右「やむを得ない事情」を立証すべき者は納税者とされており、この立証責任を訴訟において転換する理由もないと考えられるから、その前提となる「法定帳簿等を保存しない」事実の立証は課税庁にあると解されるのであって、訴訟における攻撃防御方法としても、この立証責任を別異に解すべき理由はない。

ト 仕入税額控除の実質的権利性

しばしば、消費税法は仕入税額控除を権利として規定していないと論じられる。

例えば、西山由美教授は、「日本の消費税法では、仕入税額控除をそもそも権利として位置づけていないために、請求権の行使時期に関する規定はない。確定申告に関する規定(消費税法45条1項)において、事業者は課税期間中に国内で行った課税資産の譲渡等に係る課税標準の合計額(課税標準額)に対する消費税額と、当該課税期間中に国内で行った課税仕入れに係る支払対価の金額に108分の6.3を乗じた金額(同法30条1項)を記載することが定められているのみである。」とされる(※2)。

(※2) 西山由美「消費課税におけるインボイスの機能と課題:EU域内の共通ルールと欧州司法裁判所判例を素材として」法学新報123巻11=12号127頁(2017)。

また、仕入税額控除があくまでも税額控除とされていて、課税標準は売上であることからすれば、現在の消費税は売上税としての性質を有するものであるとの議論が展開されているように思われる。

例えば、金子友裕教授は、日本の消費税を、賦課課税かそれとも取引高税かという見地から捉えた場合、最高裁平成16年12月20日第二小法廷判決(集民215号1005頁)に付された滝井繁男裁判官の反対意見が、仕入税額控除を「単なる申告手続上の特典ではない」と位置付けていることを反対解釈し、「我が国の消費税法は、仕入税額控除を『単なる申告手続き上の特典』のように位置付けていることになり、取引高税(aモデル)に恩典的な仕入税額控除を含めたものとして捉えている」と論じられる(※3)。

(※3) 金子友裕「消費税法における仕入税額控除の考察」税法学585号3頁(2021)。

また、今村隆教授は、「仕入税額控除を税額控除のbenefitにとどめている。そうすると、共通対応課税仕入れに区分することにより、仕入税額控除が一部遮断されるとしてもあくまでもbenefitの問題にとどま〔る〕」とされる(※4)。かように、仕入税額控除が権利として規定されていないことや、税額控除に置かれている点には十分な関心を寄せるべきであろう。

(※4) 今村隆・ジュリスト1563号134頁(2021)。

しかしながら、そのような消費税法の構造が認められるとしても、そうであるからといって、仕入税額控除に関して、税制改革法の理念が消費税法に承継されていないとみるべきなのであろうか。再説するが、税制改革法10条2項では、「消費税は、事業者による商品の販売、役務の提供等の各段階において課税し、経済に対する中立性を確保するため、課税の累積を排除する方式によるもの〔下線筆者〕」とする考え方が掲げられているのである。

消費税法上の仕入税額控除が否認要件として位置付けられるとする卑見を前提とすれば、一定の要件が充足されない限り仕入税額控除は否認されないという建付けであることになる。

別言すれば、原則と例外の関係に当てはめると、仕入税額控除の適用は原則であり、例外的に一定の否認要件が充足されると同控除が受けられなくなるという構造である。帳簿・請求書等が不保存でない限り、事業者は仕入税額控除を受けることができると考えるべきなのではなかろうか(なお、ここにいう帳簿・請求書等の不保存の中には、帳簿・請求書等が法定要件を充足していないことをも包摂される。)。

この点は、帳簿書類等の不存在についての主張・立証責任が課税庁側に負わされているという点からも判然とするのである。このように考えると、仕入税額控除の否認には一定のハードルが用意されているというべきである。

もっとも、平成9年度税制改正以前には、「帳簿又は請求書等」の保存がない場合に仕入税額控除の適用がないとされていた消費税法30条7項は、同年の税制改正において、「帳簿及び請求書等」の保存がない場合に仕入税額控除の適用がない旨に改正された。すなわち、帳簿だけの不保存では足りず、請求書等の不保存についても課税庁側は主張・立証をしなければならなくなったのである。一般的に、そのような理解はされていないようであるが、文理に忠実に解釈すれば、仕入税額控除の否認要件が厳しいものとなったとみることができるのである。このように考えると、必ずしも仕入税額控除の否認のハードルが緩和されたとだけみるのは正解とはいえまい。

あくまでも、平成9年度税制改正前は、帳簿「又は」請求書等の保存がないとの主張立証に成功すれば、課税庁側は仕入税額控除の適用を否認することができたのであるが、同年度改正によって、帳簿「及び」請求書等の両方の不存在の主張立証に成功しなければ、仕入税額控除の適用を否認することができなくなったのである(そのことを考慮に入れる必要があると思われるが、この点については、別に論稿を用意することとしたい。)。

チ 本件事案における「保存」

このように、帳簿書類等の保存に係る主張立証については課税当局側に課されていることからすれば、課税庁は、帳簿書類等が存在しないことに対する主張立証責任を負っているということになる。しかし「存在しない」ことの証明とは、いわば「悪魔の証明」であるといってもよい。物が存在しないという点についての証明は事実上不可能であるといってもよいからである。

そこで、この規定を意味のあるものとするには、かかる主張立証活動について一定の緩和が用意されるべきであるということにもなろう。このままの主張立証責任の分配論では、そもそも証拠との距離が遠い税務当局側に保存がないこと、すなわち悪魔の証明に係る責任を課すこととなり、あまりにも均衡を欠くともいえるからである。

その主張立証責任を緩和するためには、例えば、消費税法30条7項にいう帳簿・請求書等の「保存」という概念の意味内容に、帳簿・請求書等の「提出」を読み込ませることとなれば、「保存」のないことに対する主張立証責任が過度に重すぎるという問題は一応解決できるし、このように解せば、悪魔の証明問題も解決することができることになる。

しかしながら、「保存」という概念に「提出」なる意味を読み込ませることは、文理解釈上無理があるといわざるを得ない。そこで、本連載の始めに確認した最高裁平成16年12月16日第一小法廷判決(以下「最高裁平成16年判決」ともいう。)もそのような安易な解釈論に導かれることを避け、「保存」の意味を、あくまでも日本語として通常理解し得る「保存」の意味の範囲内において解釈を展開しているのである。すなわち、「保存」の状態論に持ち込んでいるといってもよいと思われる。

最高裁平成16年判決は、消費税法30条7項の「保存」について、如何なる状態で「保存」することを指すのかという点から議論を展開し、「税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存」することを説示したのである。「保存」にもさまざまな態様による保存があり得る中、消費税法が予定している「保存」については、適宜にこれを提出できる「状態での保存」と読み込むことによって、証拠との距離の遠い課税庁にも主張立証を可能なものとして「保存」の意義を解釈したとみることができるのではなかろうか。

このような考察の上で最高裁平成16年判決を再読すると、同最高裁は、「法62条に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は、法30条7項にいう『事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合』に当た〔る〕」こととなり、その場合には仕入税額控除が否認されることになる。税務当局がかかる立証活動に成功すると仕入税額控除は否認されることになるのであるが、他方で、「事業者が災害その他やむを得ない事情により当該保存をすることができなかったことを証明」することができれば、仕入税額控除が否認されることを障害することになると説示していると解することができるのではなかろうか。

(了)

「酒井克彦の〈深読み◆租税法〉」は、毎月第2週に掲載されます。

連載目次

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉

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筆者紹介

酒井 克彦

(さかい・かつひこ)

法学博士(中央大学)。
国税庁等での勤務を経て、中央大学法科大学院教授として、法科大学院のほか税務大学校等でも教鞭をとる。
一般社団法人アコード租税総合研究所 所長、一般社団法人ファルクラム 代表理事。2025年5月13日、逝去。

一般社団法人ファルクラム https://fulcrumtax.net/
一般社団法人アコード租税総合研究所 http://accordtax.net/

【著書】
『「正当な理由」をめぐる認定判断と税務解釈―判断に迷う《加算税免除規定》の解釈』(2015年、清文社)
『「相当性」をめぐる認定判断と税務解釈―借地権課税における「相当の地代」を主たる論点として』(2013年、清文社)
『スタートアップ租税法〔第4版〕』(2021年)、『クローズアップ保険税務』(2016年)その他5冊のアップシリーズ(財経詳報社)
『裁判例からみる所得税法〔二訂版〕』(2021年)、『裁判例からみる法人税法〔三訂版〕』(2019年)、『裁判例からみる税務調査』(2020年)、『裁判例からみる保険税務』(2021年、大蔵財務協会)
『レクチャー租税法解釈入門』(2015年、弘文堂)
『プログレッシブ税務会計論Ⅰ〔第2版〕、Ⅱ〔第2版〕、Ⅲ、Ⅳ』(Ⅰ、Ⅱ 2018年、Ⅲ 2019年、Ⅳ 2020年、中央経済社)
『アクセス税務通達の読み方』(2016年)、『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント -法人税裁判事例精選20』(2017年)、『同 -所得税裁判事例精選20』(2018年)、『同-相続税裁判事例精選20』(2019年、第一法規)
『30年分申告・31年度改正対応 キャッチアップ仮想通貨の最新税務』(2019年)、その他5冊のキャッチアップシリーズ(ぎょうせい)
その他書籍・論文多数

 

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