公開日: 2013/11/14 (掲載号:No.44)
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酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第9回】「武富士事件(その3)」~租税回避の意図と「住所」の認定~

筆者: 酒井 克彦

酒井克彦の

〈深読み◆租税法〉

【第9回】

「武富士事件(その3)」

~租税回避の意図と「住所」の認定~

 

国士舘大学法学部教授・法学博士
酒井 克彦

 

1 検討―承前

以上のように、納税者Xの主張を認めた最高裁判決は、住所判断において「居住意思」を重視しない態度をとる。すなわち、最高裁は、いかなる理由によって作出された外形であっても、それが客観的判断基準を表わしている限り、それに従うという態度を表明しているとみることができる。

そして、このような態度が、「租税回避の意図」によって操作され得る滞在日数の多寡を住所の判断基準とすることを否定しないという結論にも結び付いているようである。

この点が、東京高裁が客観的事実に加えて客観的に認識可能な居住意思をも併せて判断すべきとしている点との大きな差異であるといえよう。

最高裁が判断の参考とした判例は、

 最高裁昭和29年10月20日大法廷判決

 最高裁昭和32年9月13日第二小法廷判決

 最高裁昭和35年3月22日第三小法廷判決

であり、東京高裁が判断の参考としたのは、のほか、

 最高裁昭和27年4月15日第三小法廷判決

であった。

ところで、東京高裁が引用しなかったは公職選挙法上の「住所」が争点となった事例であるが、最高裁はどのように住所について説示しているのであろうか。

の最高裁は、

一定の場所を住所と認定するについては、その者の住所とする意思だけでは足りず客観的に生活の本拠たる実体を必要とするものと解すべき

としている。

すなわち、住所の認定に当たっては、居住意思だけでは判断せずに、客観的な実体があることが必要であるとしているのである。このような考え方は、本件の東京高裁の判断と抵触するものではない。したがって、の判例が東京高裁と最高裁の判断を分けたとみることは難しいように思われる。

では、東京高裁が参考としながら、最高裁が参考としなかったの判例はどうであろうか。

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酒井克彦の

〈深読み◆租税法〉

【第9回】

「武富士事件(その3)」

~租税回避の意図と「住所」の認定~

 

国士舘大学法学部教授・法学博士
酒井 克彦

 

1 検討―承前

以上のように、納税者Xの主張を認めた最高裁判決は、住所判断において「居住意思」を重視しない態度をとる。すなわち、最高裁は、いかなる理由によって作出された外形であっても、それが客観的判断基準を表わしている限り、それに従うという態度を表明しているとみることができる。

そして、このような態度が、「租税回避の意図」によって操作され得る滞在日数の多寡を住所の判断基準とすることを否定しないという結論にも結び付いているようである。

この点が、東京高裁が客観的事実に加えて客観的に認識可能な居住意思をも併せて判断すべきとしている点との大きな差異であるといえよう。

最高裁が判断の参考とした判例は、

 最高裁昭和29年10月20日大法廷判決

 最高裁昭和32年9月13日第二小法廷判決

 最高裁昭和35年3月22日第三小法廷判決

であり、東京高裁が判断の参考としたのは、のほか、

 最高裁昭和27年4月15日第三小法廷判決

であった。

ところで、東京高裁が引用しなかったは公職選挙法上の「住所」が争点となった事例であるが、最高裁はどのように住所について説示しているのであろうか。

の最高裁は、

一定の場所を住所と認定するについては、その者の住所とする意思だけでは足りず客観的に生活の本拠たる実体を必要とするものと解すべき

としている。

すなわち、住所の認定に当たっては、居住意思だけでは判断せずに、客観的な実体があることが必要であるとしているのである。このような考え方は、本件の東京高裁の判断と抵触するものではない。したがって、の判例が東京高裁と最高裁の判断を分けたとみることは難しいように思われる。

では、東京高裁が参考としながら、最高裁が参考としなかったの判例はどうであろうか。

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連載目次

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉

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筆者紹介

酒井 克彦

(さかい・かつひこ)

法学博士(中央大学)。
国税庁等での勤務を経て、現在、中央大学法科大学院教授として、法科大学院のほか税務大学校等でも教鞭をとる。
一般社団法人アコード租税総合研究所 所長、一般社団法人ファルクラム 代表理事。

一般社団法人ファルクラム https://fulcrumtax.net/
一般社団法人アコード租税総合研究所 http://accordtax.net/

【著書】
「正当な理由」をめぐる認定判断と税務解釈―判断に迷う《加算税免除規定》の解釈』(2015年、清文社)
「相当性」をめぐる認定判断と税務解釈―借地権課税における「相当の地代」を主たる論点として』(2013年、清文社)
『スタートアップ租税法〔第4版〕』(2021年)、『クローズアップ保険税務』(2016年)その他5冊のアップシリーズ(財経詳報社)
『裁判例からみる所得税法〔二訂版〕』(2021年)、『裁判例からみる法人税法〔三訂版〕』(2019年)、『裁判例からみる税務調査』(2020年)、『裁判例からみる保険税務』(2021年、大蔵財務協会)
『レクチャー租税法解釈入門』(2015年、弘文堂)
『プログレッシブ税務会計論Ⅰ〔第2版〕、Ⅱ〔第2版〕、Ⅲ、Ⅳ』(Ⅰ、Ⅱ 2018年、Ⅲ 2019年、Ⅳ 2020年、中央経済社)
『アクセス税務通達の読み方』(2016年)、『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント -法人税裁判事例精選20』(2017年)、『同 -所得税裁判事例精選20』(2018年)、『同-相続税裁判事例精選20』(2019年、第一法規)
『30年分申告・31年度改正対応 キャッチアップ仮想通貨の最新税務』(2019年)、その他5冊のキャッチアップシリーズ(ぎょうせい)
その他書籍・論文多数

 

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