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酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第52回】「国会審議から租税法条文を読み解く(その1)」

筆者:酒井 克彦

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酒井克彦の

〈深読み◆租税法〉

【第52回】

「国会審議から租税法条文を読み解く(その1)」

 

中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦

 

はじめに

租税法の解釈は文理解釈を第一として行われなければならないといわれることが多く(酒井克彦『レクチャー租税法解釈入門』6頁(弘文堂2015))、また、文理解釈は租税法律主義の考え方に最も合致しているともいえよう。
租税は、国民の財産権を侵害するものであるから、租税法の解釈において恣意性や揺らぎができるだけ排除されなければならないことはいうまでもない。

もっとも、租税法には侵害規範的性質を有するものと、そうではない非課税や減免、控除などの規定もあることからすれば、財産権の侵害規範という性質論のみで、文理解釈を導き出すことには無理があるともいい得るが、他方で、特定の納税者に有利に働く租税特別措置といった減免規定こそ、例外的取扱いであるから文理に忠実な厳格な解釈がなされなければならないという考え方もある。

いずれにせよ、租税法においては文理解釈が第一義的に優先されるべき解釈姿勢であるとしても、さりとて、租税法が法である限り、その法の趣旨や目的を無視した解釈が許されないことも当然である。
文理解釈によって導出された結論の妥当性を判断するに当たって、法の趣旨や目的を確認することもまた重要である。そのような意味では、ただ単に「法律解釈は文理解釈によるべき」と強調しすぎることにも問題があるように思われる。

もっとも、文理解釈においても、法条に用いられている用語(概念)や文章の意義を明らかにするためには、さまざまなリーガルリサーチに基づいたアシストを必要とするのが常である。
すなわち、例えば、学説や判例の確認はもとより、通達や文書回答手続の回答結果等によって政府の見解を調査することも重要であろう。そのほか、立法当時の国会における審議や法条の解釈を巡る答弁なども極めて重要なリーガルアシストを提供するといえよう。

本稿においては、「国会審議を確認することによって租税法条文を読み解く」方法を検討してみたい。その一つの例として、実際の国会審議を参照し、所得税法72条《雑損控除》の規定の解釈に係るヒントを得てみたい。

 

Ⅰ 雑損控除の意義

所得税法72条1項は、次のように雑損控除を規定している。


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筆者紹介

  • 酒井 克彦

    (さかい・かつひこ)

    法学博士(中央大学)。
    国税庁等での勤務を経て、現在、中央大学商学部教授として、学部のほか大学院やロースクール等でも教鞭をとる。
    一般社団法人アコード租税総合研究所 所長、一般社団法人ファルクラム 代表理事。

    一般社団法人ファルクラム http://fulcrumtax.net/
    一般社団法人アコード租税総合研究所 http://accordtax.net/

    【著書】
    「正当な理由」をめぐる認定判断と税務解釈―判断に迷う《加算税免除規定》の解釈』(2015年、清文社)
    「相当性」をめぐる認定判断と税務解釈―借地権課税における「相当の地代」を主たる論点として』(2013年、清文社)
    『スタートアップ租税法〔第3版〕』(2015年)、『クローズアップ保険税務』(2016年)その他5冊のアップシリーズ(財経詳報社)
    『裁判例からみる所得税法』(2016年、大蔵財務協会)
    『裁判例からみる法人税法〔2訂版〕』(2017年、大蔵財務協会)
    『レクチャー租税法解釈入門』(2015年、弘文堂)
    『プログレッシブ税務会計論Ⅰ〔第2版〕、Ⅱ〔第2版〕』(2018年、中央経済社)
    『アクセス税務通達の読み方』(2016年)、『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント -法人税裁判事例精選20』(2017年)、『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント -所得税裁判事例精選20』(2018年、第一法規)
    『30年分申告・31年度改正対応 キャッチアップ仮想通貨の最新税務』(2019年、ぎょうせい)
    その他書籍・論文多数

     

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