酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第102回】
「節税義務が争点とされた事例(その5)」
中央大学法科大学院教授・法学博士
酒井 克彦
はじめに
東京地裁平成7年11月27日判決(判時1575号71頁)は、2億8,000万円もの税理士の債務不履行責任が肯定された事例として、つとに有名な事件である。3,000万円もの報酬をとりながら、「時間がなかったのでとりあえず延納の手続をとっておきました。物納にしたければ、そのときまた私が手続をとります。」などという誤った教示をしていた事件として、税理士の賠償責任問題を論ずる際、しばしば登場する事件である(※)。
(※) 須藤英章「税理士の責任」川井健=塩崎勤『新・裁判実務大系 専門家責任訴訟法』191頁以下(青林書院2004)参照。
とかく、この事件は税理士の負わされた損害賠償額の大きさが注目される事件であるが、角度を変えて見れば、別の論点を提供する素材となる。具体的には、依頼者と税理士との間に締結された(準)委任契約における「委任の本旨」の解釈の問題や税理士の裁量権の問題という論点を投げかける大変興味深い問題が潜在しているといえよう。
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