酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第32回】
「租税法の解釈における厳格性(その2)」
中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦
《(その1)はこちら》
はじめに
1 厳格な解釈の要請
(1) 厳格な解釈が要請される理由
(2) 租税法が財産権の侵害規範であるため
(3) 予測可能性を担保するため
(4) 行政裁量の余地を否定し、恣意的な課税を防止する必要があるため
(5) 自己に都合のよい解釈を許容せず、公平な課税を実現するため
2 租税法にみる財産権の侵害規範性
前述のとおり、租税法律主義とは、国民の財産権の絶対に対する国家の課税権による侵害を、国民の意思たる法律によってのみ制限し得るとする原則である。
憲法84条
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
租税の賦課徴収に関する実体的手続的規定はすべて国民の代表者で構成されている議会で制定する法律によって定められなければならず、法律の定める要件と手続によってのみ国家は租税を賦課徴収することができる。これは、上記のとおり、憲法の要請するところである。
換言すると、課税範囲を法律によって明らかにすることにより、その範囲内においては国家の課税権行使が適法化されることになる。
また、これを国民の側からいうと、かかる範囲を超えては租税を賦課徴収されない、すなわち財産権を侵害されないということになるであろう。
この点につき、退職慰労金がみなし相続財産に含まれるか否かが争点となった事例において、大阪地裁昭和37年2月16日判決(民集26巻10号2030頁)は、次のように示す。
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