酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第42回】
「法人税法にいう『法人』概念(その6)」
~株主集合体説について考える~
中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦
はじめに
1 個人株主と法人との間の配当二重課税排除
(1) 支払配当控除方式
(2) グロスアップ方式(法人段階源泉課税方式、インピュテーション方式)
2 配当控除(所法92)と受取配当益金不算入(法法23)
3 LPS事件
(1) 事案の概要
(2) 判決の要旨
4 LPS事件の検討
(1) 参考となる最高裁判決
(2) 法人該当性と私法準拠
(3) 第一のアプローチ
(4) 第二のアプローチ
5 形式的な借用概念論の限界
(1) 統一説を前提とした解釈論
(2) 外国における概念と我が国における概念
(3) ガーンジー島事件
6 民法上の「法人」概念と租税法上の「法人」
(1) 第二のアプローチによる検討
ここまで、法人該当性を検討するに当たっては、2つのアプローチが考えられることを示した上で、LLC事件、ガーンジー島事件を素材に議論を進めてきた。すなわち、
① 第一のアプローチ
租税法上の「法人」について、概念論の見地から、私法上の「法人」概念の理解を参考にして検討する方法(「法人」概念の検討)
② 第二のアプローチ
租税法上の「法人」について、性質論の見地から、私法上の「法人」の性質と比較した上で検討する方法(「法人」性質論の検討)
の2つのアプローチである。
上記の検討からすれば、第二のアプローチを採用することには一定の説得性があることが判然とする。
したがって、LPS事件最高裁平成27年7月17日第二小法廷判決が第二のアプローチを採用したことは妥当といえよう。
しかしながら、ここで改めて、租税法上の「法人」概念について再確認しておく必要があるのではなかろうか。なぜなら、第二のアプローチは、概念を単なる記号としてみるのではなく、その実質的内容にまで踏み込んで解釈論を展開する構成であるため、我が国租税法が採用する「法人」概念の実質的意味内容が明らかにならない以上、かかるアプローチを展開することはできないと言わざるを得ないからである。
(2) 民法上の法人概念
我が国の租税法がいかなる法人観を有しているかという点については、すでにこの連載の【第37回】において述べたところであるが、通説はいわゆる株主集合体説という考え方に立つ。
他方で、民法の学説上は法人を法律による組織体とみる組織体説が通説であると思われる。すなわち、この立場は、法人実在説的な考え方であり、我が国の租税法が支持する法人擬制説的な立場とはその考え方を異にする。
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