酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第28回】
「「海洋掘削装置」は所得税法上の「船舶」に当たるか?(その1)」
~同一税法内部における同一用語の解釈~
中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦
はじめに
前回までは、異なる租税法で用いられている同一の用語をいかに解釈すべきかという問題を取り上げた。
具体的には、消費税法上の「事業」概念と所得税法上の「事業」概念について、これを同義のものとして理解すべきかどうかという問題を検討したが、そこでは、法の趣旨に従った解釈が展開される余地があることを論じたところである。
そこで、今回からは、同じ租税法の中で用いられている同一の用語はどのように解するべきかという問題について検討することとする。具体的には、ここでは、所得税法161条3号にいう「船舶」の意義を巡って争われた東京地裁平成25年9月6日判決を素材として、この問題を考えてみたい。
所得税法は、内国法人が外国法人からリースをしている資産が「船舶」に当たると、その内国法人が支払うリース料に対して20%の源泉徴収義務があると規定している(所法161三、212)。
所得税法161条《国内源泉所得》
この編において「国内源泉所得」とは、次に掲げるものをいう。
三 国内にある不動産、国内にある不動産の上に存する権利若しくは採石法・・・の規定による採石権の貸付け・・・、鉱業法・・・の規定による租鉱権の設定又は居住者若しくは内国法人に対する船舶若しくは航空機の貸付けによる対価〔下線筆者〕
ある対象物がこの「船舶の貸付け」に当たるか否かの判断に当たっては、まず、そこにいう「船舶」の意味を明らかにしなければならないのはいうまでもない。しかしながら、所得税法には「船舶」の定義はない。
これまでこの連載で紹介してきた検討の流れを考えると、所得税法上の「船舶」という概念を理解するに当たっては、まず、固有概念なのか、あるいは他の法律からの借用概念なのかという点から考察をすることになりそうである。
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