酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第31回】
「租税法の解釈における厳格性(その1)」
中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦
はじめに
今日の通説的理解として、「租税法においては厳格な解釈が要請される」とされているが、その厳格さにはどの程度のものが求められるのであろうか。また、そもそも、なぜ租税法の解釈に厳格さが求められるのであろうか。
ここでは、こうした「租税法解釈の厳格さ」について、種々の判例や学説等を踏まえ検証してみたい。
1 厳格な解釈の要請
(1) 厳格な解釈が要請される理由
法律の解釈には、文理解釈といって条文に記載されている文章を文法どおりに素直に読み解釈すべきとする解釈手法と、目的論的解釈といって、その法条の趣旨や目的に応じて柔軟に、時には条文の文章や概念の意味から離れて解釈を行うことも許されるべきとする解釈手法がある(この点は次回(その2)以降において詳述する)。後者に比べて前者は厳格な解釈であるといわれている。すなわち、ここにいう厳格さとは、条文の文章や用語に忠実に解釈をすることを意味している。概ね、文理解釈を指すものと理解してもよい。
以前は、租税法の文言に拘泥しすぎた文理解釈ではなく目的論的解釈をすることが租税法解釈として妥当であるとの立場の見解が強く論じられた時期もあるが、今日の租税法の解釈においては、文理解釈による厳格さが要請されるとの見解が通説的であるといえよう。
ここで、厳格さが要請される理由としては、大別し次の4つを挙げることができるだろう。
① 租税法が財産権の侵害規範であるため
② 納税者の予測可能性を担保するため
③ 行政裁量の余地を否定し、恣意的な課税を防止する必要があるため
④ 自己に都合のよい解釈を許容せず、公平な課税を実現するため
なお、これらは後述するとおり、相互に作用しあうものであって、必ずしも明確に区分できるわけではないことには留意しておきたい。
それらを踏まえた上で、以下、それぞれの性質を概観してみたい。
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