酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第43回】
「混沌とした租税回避論の再整理(その1)」
中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦
はじめに
租税回避とは課税されるべきであろうか。それとも、課税されるべきではないのであろうか。
「租税回避はけしからん」として、課税されるべきであると考えられがちであるように思われる。
この点、学説上の通説は、租税回避とは課税されないものと理解している。
いわば、租税回避は一種の安全地帯(セーフハーバー)として捉えられているのである。
しかし、今日の租税回避論は混沌としている感が否めない。
すなわち、従前では考えられなかった租税負担の軽減を図る行為が頻発し、裁判や学説上、「租税回避とは何か」を再考する契機となっている。
例えば、最近ではヤフー事件が注目を集め、りそな銀行事件なども大変話題となった。これらは、租税法学者に限らず、租税実務家にも非常にインパクトのあった事件であると思われる。
本稿では、こうした最近の租税負担の減少を図った事件などに触れた上で、混沌とした租税回避論について一定の整理を図りたいと考えている。
Ⅰ 租税回避の定義の再確認
1 従来の租税回避の定義
通説的な学説として、金子宏教授の租税回避の定義を確認しておこう。
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