酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第71回】
「社会通念から読み解く租税法(その2)」
中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦
Ⅱ 租税法と社会通念(承前)
2 財産分与に係る第二次納税義務
(1) 財産分与と「著しく低い額の対価による譲渡」
離婚に伴う財産分与については、既に過去の最高裁判決によって、財産分与を行った者に対して譲渡所得課税がなされるとされている。
すなわち、最高裁昭和50年5月27日第三小法廷判決(民集29巻5号641頁)は、次のように述べ、財産分与者に対する譲渡所得課税を肯定する。
財産分与に関し右当事者の協議等が行われてその内容が具体的に確定され、これに従い金銭の支払い、不動産の譲渡等の分与が完了すれば、右財産分与の義務は消滅するが、この分与義務の消滅は、それ自体一つの経済的利益ということができる。したがって、財産分与として不動産等の資産を譲渡した場合、分与者は、これによって、分与義務の消滅という経済的利益を享受したものというべきである。
このように、財産分与をする側の者に対して所得課税が行われると判断されており、財産を取得した側に対する課税はなされないものと理解されているところである。
これに対して、離婚に際し自宅を財産分与された妻が、元夫が国税を滞納していたことに関して「第二次納税義務」の納税告知処分を受けたことから、かかる納税告知処分の取消しを求めた事例がある。次に、東京地裁平成29年6月27日判決(判例集未登載)をみてみよう。
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