公開日: 2018/12/13 (掲載号:No.298)
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酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第71回】「社会通念から読み解く租税法(その2)」

筆者: 酒井 克彦

酒井克彦の

〈深読み◆租税法〉

【第71回】

「社会通念から読み解く租税法(その2)」

 

中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦

《(その1)はこちら

はじめに

Ⅰ 社会通念とは何か

Ⅱ 租税法と社会通念

1 興銀事件

 

Ⅱ 租税法と社会通念(承前)

2 財産分与に係る第二次納税義務

(1) 財産分与と「著しく低い額の対価による譲渡」

離婚に伴う財産分与については、既に過去の最高裁判決によって、財産分与を行った者に対して譲渡所得課税がなされるとされている。

すなわち、最高裁昭和50年5月27日第三小法廷判決(民集29巻5号641頁)は、次のように述べ、財産分与者に対する譲渡所得課税を肯定する。

財産分与に関し右当事者の協議等が行われてその内容が具体的に確定され、これに従い金銭の支払い、不動産の譲渡等の分与が完了すれば、右財産分与の義務は消滅するが、この分与義務の消滅は、それ自体一つの経済的利益ということができる。したがって、財産分与として不動産等の資産を譲渡した場合、分与者は、これによって、分与義務の消滅という経済的利益を享受したものというべきである。

このように、財産分与をする側の者に対して所得課税が行われると判断されており、財産を取得した側に対する課税はなされないものと理解されているところである。

これに対して、離婚に際し自宅を財産分与された妻が、元夫が国税を滞納していたことに関して「第二次納税義務」の納税告知処分を受けたことから、かかる納税告知処分の取消しを求めた事例がある。次に、東京地裁平成29年6月27日判決(判例集未登載)をみてみよう。

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【第71回】

「社会通念から読み解く租税法(その2)」

 

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酒井 克彦

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はじめに

Ⅰ 社会通念とは何か

Ⅱ 租税法と社会通念

1 興銀事件

 

Ⅱ 租税法と社会通念(承前)

2 財産分与に係る第二次納税義務

(1) 財産分与と「著しく低い額の対価による譲渡」

離婚に伴う財産分与については、既に過去の最高裁判決によって、財産分与を行った者に対して譲渡所得課税がなされるとされている。

すなわち、最高裁昭和50年5月27日第三小法廷判決(民集29巻5号641頁)は、次のように述べ、財産分与者に対する譲渡所得課税を肯定する。

財産分与に関し右当事者の協議等が行われてその内容が具体的に確定され、これに従い金銭の支払い、不動産の譲渡等の分与が完了すれば、右財産分与の義務は消滅するが、この分与義務の消滅は、それ自体一つの経済的利益ということができる。したがって、財産分与として不動産等の資産を譲渡した場合、分与者は、これによって、分与義務の消滅という経済的利益を享受したものというべきである。

このように、財産分与をする側の者に対して所得課税が行われると判断されており、財産を取得した側に対する課税はなされないものと理解されているところである。

これに対して、離婚に際し自宅を財産分与された妻が、元夫が国税を滞納していたことに関して「第二次納税義務」の納税告知処分を受けたことから、かかる納税告知処分の取消しを求めた事例がある。次に、東京地裁平成29年6月27日判決(判例集未登載)をみてみよう。

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連載目次

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉

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筆者紹介

酒井 克彦

(さかい・かつひこ)

法学博士(中央大学)。
国税庁等での勤務を経て、現在、中央大学法科大学院教授として、法科大学院のほか税務大学校等でも教鞭をとる。
一般社団法人アコード租税総合研究所 所長、一般社団法人ファルクラム 代表理事。

一般社団法人ファルクラム https://fulcrumtax.net/
一般社団法人アコード租税総合研究所 http://accordtax.net/

【著書】
「正当な理由」をめぐる認定判断と税務解釈―判断に迷う《加算税免除規定》の解釈』(2015年、清文社)
「相当性」をめぐる認定判断と税務解釈―借地権課税における「相当の地代」を主たる論点として』(2013年、清文社)
『スタートアップ租税法〔第4版〕』(2021年)、『クローズアップ保険税務』(2016年)その他5冊のアップシリーズ(財経詳報社)
『裁判例からみる所得税法〔二訂版〕』(2021年)、『裁判例からみる法人税法〔三訂版〕』(2019年)、『裁判例からみる税務調査』(2020年)、『裁判例からみる保険税務』(2021年、大蔵財務協会)
『レクチャー租税法解釈入門』(2015年、弘文堂)
『プログレッシブ税務会計論Ⅰ〔第2版〕、Ⅱ〔第2版〕、Ⅲ、Ⅳ』(Ⅰ、Ⅱ 2018年、Ⅲ 2019年、Ⅳ 2020年、中央経済社)
『アクセス税務通達の読み方』(2016年)、『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント -法人税裁判事例精選20』(2017年)、『同 -所得税裁判事例精選20』(2018年)、『同-相続税裁判事例精選20』(2019年、第一法規)
『30年分申告・31年度改正対応 キャッチアップ仮想通貨の最新税務』(2019年)、その他5冊のキャッチアップシリーズ(ぎょうせい)
その他書籍・論文多数

 

関連書籍

資産税実務問答集

井上浩二 編 信永 弘 編

現代税法入門塾

石村耕治 編

入門税法

公益社団法人 全国経理教育協会 編

図解 租税法ノート

八ッ尾順一 著

【電子書籍版】資産税実務問答集

後藤幸泰 編 信永 弘 編

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