酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第131回】
「消費税法上の実質行為者課税の原則(その4)」
中央大学法科大学院教授・法学博士
酒井 克彦
《(その1)はこちら》
はじめに
Ⅰ 素材とする事案
1 概観
2 前提事実
(1) 当事者
(2) 受託契約約款の定め
(3) A場における牛枝肉取引の流れ
(4) 買受人との間の約定の締結
(5) 債権の貸倒れに至る経緯
3 争点
4 判決の要旨
《(その2)はこちら》
Ⅱ 実質所得者課税の原則
1 形式と実質
2 原因・結果アプローチ
《(その3)はこちら》
Ⅲ 消費税法の本質と実質性の追求
1 「享受」という概念
2 随時税・行為税という性質
3 売上税という性質
Ⅳ 所得課税法における実質課税の原則との径庭
1 所得税法・法人税法と消費税法
例えば、国税不服審判所令和4年11月9日裁決(裁決事例集129号174頁)は、次のように論じる。
(イ) 所得税法第12条は、いわゆる実質所得者課税の原則を規定しているところ、その趣旨は、担税力に応じた公平な税負担を実現するため、収益の法律上の形式的帰属者(名義人)と法律上の実質的帰属者が相違する場合、後者を収益の帰属者とするというものと解される。
そして、事業(農業)から生ずる収益を享受する者が誰であるかは、その事業を経営していると認められる者(事業主)が誰であるかにより判定すべきであり、その事業を経営していると認められる者(事業主)が誰であるかという点は、実質所得者課税の原則を規定した所得税法第12条の趣旨に鑑み、農産物の生産及び出荷、口座の管理、必要経費の負担、事業の経理及び申告、関係者の認識等を総合勘案してその事業の経営方針の決定につき支配的影響力を有すると認められる者が当該事業の事業主に該当すると判定すべきである。
(ロ) また、消費税法第13条第1項も、法律上資産の譲渡等を行ったとみられる者が単なる名義人であって、その資産の譲渡等に係る対価を享受せず、その者以外の者がその資産の譲渡等に係る対価を享受する場合には、当該資産の譲渡等は、当該対価を享受する者が行ったものとして、同法を適用する旨規定しており、所得税法と同様の実質課税の原則を規定したものと解されるから、その事業に係る資産の譲渡等の対価を享受する者が誰であるかという点は、上記(イ)と同様に判定すべきである。
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