酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第41回】
「法人税法にいう『法人』概念(その5)」
~株主集合体説について考える~
中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦
はじめに
1 個人株主と法人との間の配当二重課税排除
(1) 支払配当控除方式
(2) グロスアップ方式(法人段階源泉課税方式、インピュテーション方式)
2 配当控除(所法92)と受取配当益金不算入(法法23)
3 LPS事件
(1) 事案の概要
(2) 判決の要旨
4 LPS事件の検討
(1) 参考となる最高裁判決
(2) 法人該当性と私法準拠
(3) 第一のアプローチ
(4) 第二のアプローチ
5 形式的な借用概念論の限界
(1) 統一説を前提とした解釈論
前回の第一のアプローチとは、いわば形式的な借用概念論である。
租税法が法文の中に用いている概念で、それが固有概念であるとはいえず、他の法領域から借用していると思われる概念を理解するに当たっては、当該他の法領域で用いられている概念の意義に合わせてかかる概念を理解しようとする考え方が、通説である。
これは一般的に「統一説」と呼ばれる考え方であり、租税法律主義が要請する予測可能性や法的安定性の見地からは優れた理論であるといわれている。
過去には「独立説」という見解もみられた。これは、他の法領域から借用したと思われる概念であるとしても、そうであるからといって、一度租税法の中に取り込んだ以上は租税法の見地から解釈すべきであって、およそ他の法領域でいかなる意味内容を付与されているかという問題とは切り離すべきだとする考え方である。今日的にこの立場を採用する学説は管見するところ存在しないように思われる。
そこで、前述の統一説が最も妥当な解釈論であると理解されているのであるが、さりとて、他の法領域から借用したとしても(基本的には私法からの借用のみを念頭に置いているが)、私法には私法の法目的があるのであって、かかる法の趣旨や目的から離れたところで概念のみを取り出し、私法における概念の意義に合わせて理解しようとすることには問題があるのではなかろうか。すなわち、統一説が妥当する場面が多いのは確かであるとしつつも、ときには難しい場面があり得るのではないかとする考え方もある。
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