公開日: 2016/10/13 (掲載号:No.189)
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酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第46回】「宝くじに係る課税と所得の実現(その1)」

筆者: 酒井 克彦

酒井克彦の

〈深読み◆租税法〉

【第46回】

「宝くじに係る課税と所得の実現(その1)」

 

中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦

 

【設問】

平成28年6月7日、Aは、労務提供の対価として、同年5月に発売されたサマージャンボ宝くじ抽選券1,000枚(1枚300円)を無償で譲り受けた。その後、6月15日に行われた抽選の結果、2等1,000万円を含めて総額1,003万円の当選となった。

宝くじ抽選券の支給が労務提供の対価であるとするならば、かかる支給は給与所得に該当すると解されるが、ではこの場合、給与所得の金額は、300,000円(=1,000枚×300円)と解するべきか、若しくは1,003万円と解するべきであろうか。

また、Aが1,003万円を受け取ったとしても、宝くじの当選金が非課税とされていることから直接の課税関係は生じないが、理論的には、この1,003万円は給与所得に該当すると解釈すべきか、若しくは一時所得と解釈すべきであろうか。

この問題の解決に当たっては、所得税法にいう「所得」とは何かという所得概念の検討を避けて通ることはできない。また、この問題は、所得はいつの段階で課税されるべきものかという課税時期の問題と表裏一体のものとして捉えるべきであると思われる。

 

Ⅰ 課税の時期の原則

1 権利確定主義

所得税法36条は、

その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

と規定し、同条2項において、

前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。

と規定している。同条は、一般的に権利確定主義を表したものといわれている。

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酒井克彦の

〈深読み◆租税法〉

【第46回】

「宝くじに係る課税と所得の実現(その1)」

 

中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦

 

【設問】

平成28年6月7日、Aは、労務提供の対価として、同年5月に発売されたサマージャンボ宝くじ抽選券1,000枚(1枚300円)を無償で譲り受けた。その後、6月15日に行われた抽選の結果、2等1,000万円を含めて総額1,003万円の当選となった。

宝くじ抽選券の支給が労務提供の対価であるとするならば、かかる支給は給与所得に該当すると解されるが、ではこの場合、給与所得の金額は、300,000円(=1,000枚×300円)と解するべきか、若しくは1,003万円と解するべきであろうか。

また、Aが1,003万円を受け取ったとしても、宝くじの当選金が非課税とされていることから直接の課税関係は生じないが、理論的には、この1,003万円は給与所得に該当すると解釈すべきか、若しくは一時所得と解釈すべきであろうか。

この問題の解決に当たっては、所得税法にいう「所得」とは何かという所得概念の検討を避けて通ることはできない。また、この問題は、所得はいつの段階で課税されるべきものかという課税時期の問題と表裏一体のものとして捉えるべきであると思われる。

 

Ⅰ 課税の時期の原則

1 権利確定主義

所得税法36条は、

その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。

と規定し、同条2項において、

前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。

と規定している。同条は、一般的に権利確定主義を表したものといわれている。

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連載目次

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉

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筆者紹介

酒井 克彦

(さかい・かつひこ)

法学博士(中央大学)。
国税庁等での勤務を経て、現在、中央大学法科大学院教授として、法科大学院のほか税務大学校等でも教鞭をとる。
一般社団法人アコード租税総合研究所 所長、一般社団法人ファルクラム 代表理事。

一般社団法人ファルクラム https://fulcrumtax.net/
一般社団法人アコード租税総合研究所 http://accordtax.net/

【著書】
「正当な理由」をめぐる認定判断と税務解釈―判断に迷う《加算税免除規定》の解釈』(2015年、清文社)
「相当性」をめぐる認定判断と税務解釈―借地権課税における「相当の地代」を主たる論点として』(2013年、清文社)
『スタートアップ租税法〔第4版〕』(2021年)、『クローズアップ保険税務』(2016年)その他5冊のアップシリーズ(財経詳報社)
『裁判例からみる所得税法〔二訂版〕』(2021年)、『裁判例からみる法人税法〔三訂版〕』(2019年)、『裁判例からみる税務調査』(2020年)、『裁判例からみる保険税務』(2021年、大蔵財務協会)
『レクチャー租税法解釈入門』(2015年、弘文堂)
『プログレッシブ税務会計論Ⅰ〔第2版〕、Ⅱ〔第2版〕、Ⅲ、Ⅳ』(Ⅰ、Ⅱ 2018年、Ⅲ 2019年、Ⅳ 2020年、中央経済社)
『アクセス税務通達の読み方』(2016年)、『税理士業務に活かす!通達のチェックポイント -法人税裁判事例精選20』(2017年)、『同 -所得税裁判事例精選20』(2018年)、『同-相続税裁判事例精選20』(2019年、第一法規)
『30年分申告・31年度改正対応 キャッチアップ仮想通貨の最新税務』(2019年)、その他5冊のキャッチアップシリーズ(ぎょうせい)
その他書籍・論文多数

 

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