酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第46回】
「宝くじに係る課税と所得の実現(その1)」
中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦
【設問】
平成28年6月7日、Aは、労務提供の対価として、同年5月に発売されたサマージャンボ宝くじ抽選券1,000枚(1枚300円)を無償で譲り受けた。その後、6月15日に行われた抽選の結果、2等1,000万円を含めて総額1,003万円の当選となった。
宝くじ抽選券の支給が労務提供の対価であるとするならば、かかる支給は給与所得に該当すると解されるが、ではこの場合、給与所得の金額は、300,000円(=1,000枚×300円)と解するべきか、若しくは1,003万円と解するべきであろうか。
また、Aが1,003万円を受け取ったとしても、宝くじの当選金が非課税とされていることから直接の課税関係は生じないが、理論的には、この1,003万円は給与所得に該当すると解釈すべきか、若しくは一時所得と解釈すべきであろうか。
この問題の解決に当たっては、所得税法にいう「所得」とは何かという所得概念の検討を避けて通ることはできない。また、この問題は、所得はいつの段階で課税されるべきものかという課税時期の問題と表裏一体のものとして捉えるべきであると思われる。
Ⅰ 課税の時期の原則
1 権利確定主義
所得税法36条は、
その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
と規定し、同条2項において、
前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。
と規定している。同条は、一般的に権利確定主義を表したものといわれている。
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