酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第48回】
「宝くじに係る課税と所得の実現(その3)」
中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦
Ⅰ 課税の時期の原則(承前)
2 実現概念(承前)
(3) 収穫基準と所得税法
上記のとおり、Eisner v. Macomber事件において、所得の実現を決定付けたメルクマールは、“Derived-from-capital”-“the gain-derived-from-capital”である。すなわち、分離(separate)させて利用したり、利益を享受したりすることのできる利得こそが所得であるとしているのであるが、これは我が国所得税法においても採用されている考え方であると思われる。
例えば、所得税法41条《農産物の収穫の場合の総収入金額》は次のように規定している。
農業を営む居住者が農産物・・・を収穫した場合には、その収穫した時における当該農産物の価額・・・に相当する金額は、その者のその収穫の日の属する年分の事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
このように、その者が農産物を収穫した時に収穫した時の価額により収入があったものとみなされ、その収穫物を他に売却した時の所得計算に当たっては、その収穫価額を取得価額として計算することとされている(武田昌輔『コンメンタール所得税法〔3〕』3451頁(第一法規加除式))。
所得税法は権利確定主義を採用しており、そこでは、収入実現の蓋然性が高いといえるときに所得を認識するという考え方が採られている。そうであるとすれば、本来的には、単に収穫をしたのみで所得を認識するのではなく、これを他に売却し、経済的価値の流入がある場合、若しくは経済的価値の流入の蓋然性が高い場合になって初めて所得が認識されるのであるから、収穫の段階は原則的な所得認識の例外であるといえよう。つまり、例外的に所得認識の時期を早めているのが、所得税法41条であるといわれている。
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