酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第27回】
「消費税法上の「事業」と所得税法上の「事業」(その3)」
~租税法内部における同一概念の解釈~
中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦
《(その1)はこちら》
Ⅰ 事案の概要
Ⅱ 争点
Ⅲ 判決の要旨
1 第一審富山地裁平成15年5月21日判決・税資253号順号9349
2 控訴審及び上告審
《(その2)はこちら》
Ⅳ 解説
1 消費税法上の「事業」の定義
2 消費税法上の「事業」と所得税法上の「事業」
(1) 所得税法と消費税法の基礎とする「担税力」の相違
Ⅳ 解説(承前)
2 消費税法上の「事業」と所得税法上の「事業」(承前)
(2) 租税法律主義の要請
所得税法と消費税法に用いられている用語の意義を考えるに当たって、それぞれの法の趣旨を「担税力」の相違という観点から眺めて、その違いを論じることができたとしても、租税法律主義の要請する法的安定性等の議論は依然として残されているというべきであろう。
租税法中に用いられている概念の意義を他の法分野におけるのと同じ意義に用いることが法的安定性等に資するとして、租税法一般の解釈論において借用概念論が支配しており、また、その中でも統一説が通説的な地位を占めていることを考えると、この点については深慮ある検討が必要であるように思われる。
例えば、相続税の事案であるが、東京地裁平成7年6月30日判決(訟月42巻3号645頁)をみてみたい(注1)。
(注1) 本件は、父親の死亡により、その財産等を相続した原告が、相続した土地の一部について、租税特別措置法69条の3(平成4年法律第14号による改正前のもの)の定める事業の用に供されていた宅地に該当し、特例の適用を受けるものとして相続税の申告等をしたところ、被告から、特例の適用が認められないとして、相続税の更正及び過少申告加算税の賦課決定を受けたため、原告が課税処分の取消しを求めて提訴した事案である。
これは、租税特別措置法69条の4《小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例》の適用が争われた事例であるが、同地裁は、次のように論じている。
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