酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第44回】
「混沌とした租税回避論の再整理(その2)」
中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦
はじめに
Ⅰ 租税回避の定義の再確認
1 従来の租税回避の定義
2 租税回避事例 ―岩瀬事件―
3 租税回避の否認
Ⅱ 租税回避の再考
1 新しい租税軽減行為 ―りそな銀行事件―
2 「課税要件の充足を免れること」と「課税減免要件の充足を図ること」
従来の租税回避の通説的理解は、「課税要件の充足を免れて、税負担の軽減を図ること」とされてきたことは既に述べたとおりである。
そうであるとすれば、りそな銀行事件におけるX社は、課税要件の充足を免れるどころか、あえて要件の充足を図っているのであるから、従来の租税回避の定義によれば、X社の行為は「租税回避」ではないことになる。
加えて、りそな銀行事件において、最高裁が、本件取引を「制度を濫用するもの」と述べている部分にも着目しておきたい。
最高裁のこの判示については、あえて課税減免規定の要件を充足し租税負担の軽減を図る行為を租税法制度の濫用と捉え、そうした行為についても否認し得ることを示したものとの見解もあるが、この点は学説上今も争いがあるところである。
このように、「課税要件の充足を免れる」という従来の租税回避の定義を再考し、「課税減免要件の充足を図る」行為、いわば租税法制度の濫用的行為をどのように捉えるべきかが今日的な問題となっている。
3 中間概念としての租税回避
前回述べたとおり、「租税回避=課税要件の充足を免れること」という従来の定義によれば、租税回避である以上課税されないものと理解されることになる。
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