酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第4回】
「ホステス報酬事件(その1)」
~事案の論点~
国士舘大学法学部教授・法学博士
酒井 克彦
1 ホステス報酬に係る源泉徴収税額が争点となった事例
(最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決・民集64巻2号420頁)
租税法律主義の下では、条文に書いてある内容に忠実に従ったところで、租税は賦課徴収されることになる。しかし、条文の内容が十分に明確ではないとか、いくつかの解釈が可能となってしまうというようなケースは少なくない。
例えば、「期間の日数」に一定の数をかけて源泉徴収税額を算出するという規定があるとしよう。そこでは、この「期間の日数」というものをどのように理解すればよいのかという問題が起こり得る。「連続した日数」をいうのか、あるいはある一定の「期間」の中から対象となる「日数」をカウントするのか、というようにである。
租税法の条文解釈の手法には、「文理解釈」と呼ばれるものと、「目的論的解釈」と呼ばれるものがある。ところで、上記の問題を明らかにするためには、この2つの解釈手法のうちいずれが採用されると考えるべきなのであろうか。
そこで、今回から数回にわたって、パブクラブを経営する者が支払ったホステスに対する報酬に係る源泉徴収税額の計算をめぐる訴訟、いわゆる「ホステス報酬事件」を素材にして、租税法の解釈の仕方について考えてみたい。
2 ホステス報酬事件の概観
(1) 事案の概要
本件は、パブクラブを経営するX1及び株式会社X2が支払ったホステスに対する報酬について、源泉徴収税額が過少であるとして納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分がなされたところ、X1ら(原告・控訴人・上告人)がこれを不服として訴えた事例である。
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