酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第112回】
「節税商品取引を巡る法律問題(その6)」
中央大学法科大学院教授・法学博士
酒井 克彦
《(その1)はこちら》
はじめに
Ⅰ 節税商品取引における「投資者保護」の必要性
1 一般的金融商品取引と投資者保護
2 節税商品取引と投資者保護
小括
《(その2)はこちら》
Ⅱ 節税商品取引を抽出する研究の試み
1 米国訴訟との比較による節税商品過誤訴訟の今後の趨勢
2 米国におけるタックスシェルター・マルプラクティス訴訟の状況
3 我が国の節税商品過誤訴訟の状況
4 節税商品取引を巡る環境の変化
5 タックスシェルター・マルプラクティス訴訟と節税商品過誤訴訟の相違点
《(その3)はこちら》
Ⅲ 節税商品の特殊構造と特有な説明義務の模索の必要性
1 節税商品の特殊構造
(1) 商品の二重構造性
(2) リスクの二重構造性
(3) 商品の新規性
《(その4)はこちら》
2 説明内容の二重構造性
3 説明義務者の専門的知識の欠如の問題(説明義務者の適合性の問題)
4 小括
《(その5)はこちら》
Ⅳ 説明義務者の適格性―説明者の専門的知識の欠如
1 問題点の所在
2 販売者の専門的知識の欠如が問題とされた事例
(1) 米国財務省証券事件(①事件)
(2) 等価交換によるマンション建設勧誘事件(②事件)
3 節税商品販売者の専門的知識の欠如
4 節税商品取引における税理士の役割
Ⅴ 消極的説明義務
1 税理士への説明行為の委任
節税商品は「節税」を売り物とするものであるから、商品内容の説明に当たっては本体契約の説明に加えて課税上の取扱いに係る説明もなされなければならないし、課税上のリスクに係る説明もなされなければならないと考える。ところが、先に述べたとおり、金融機関や保険会社の販売担当者などが税制上の説明を行うには専門的知識の欠如という問題が惹起されるし、また、個別具体的に課税上の取扱いに係る説明を行うことは、税理士法に抵触することにもなりかねない。
この点について、森田章同志社大学名誉教授は、「従来の保険業法では、銀行員が保険の募集を行うことを想定していなかったので、保険外務員であれば顧客に開示すべきことであっても、銀行員なら何も開示しなくてもよく、むしろ説明を行うと保険業法に違反するという考え方すら存在して、変額保険の販売による被害を増大させたともいえよう」と分析される(森田章「変額保険」民商114巻4=5号731頁(1996)、同「金融サービス法」法時70巻10号26頁(1998))。
税理士法違反や保険業法違反を理由として自らが販売する商品の説明や商品に係るリスク説明を放棄することが許されるのであろうか。
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