酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第8回】
「武富士事件(その2)」
~東京高裁判決と最高裁判決~
国士舘大学法学部教授・法学博士
酒井 克彦
1 判決の要旨
(1) 〔第一審〕東京地裁平成19年5月23日判決・・・X勝訴
東京地裁は、Xは3年半ほどの本件滞在期間中、香港に住居を設け、同期間中の約65%に相当する日数、香港に滞在して起臥寝食する一方、国内には約26%に相当する日数しか滞在していなかったのであるから、本件贈与日において、Xが日本国内に住所すなわち生活の本拠を有していたと認定することは困難であるとして、Xの請求を認容した。
(2) 〔控訴審〕東京高裁平成20年1月23日判決・・・X敗訴
東京高裁は、「Xは、本件滞在期間以前は、本件杉並居宅に亡B、Cらとともに居住し、本件杉並居宅を生活の本拠としていたものである。」とし、次のように認定した上で、Xの請求を棄却した。
① 本件杉並居宅のXの居室は、Xが香港に出国した後も、家財道具等を含めて出国前のままの状態で維持され、Xが帰宅すれば、従前と同様にそのまま使用することができる状況にあった。
② Xは、本件滞在期間中も、1か月に1度は日本に帰国し、本件滞在期間を通じて4日に1日以上の割合で日本に滞在し、日本滞在中は、本件杉並居宅で起居し、特別な用事がない限り、朝夕の食事は、本件杉並自宅でとり、毎朝、本件杉並居宅からT社に出勤し、毎夕本件杉並居宅に帰宅するなど、日本滞在時の本件杉並居宅におけるXの生活の実態は、本件杉並居宅で起居する日数が減少したものの、本件滞在期間以前と何ら変わっていなかった。
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