酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第49回】
「限られた租税行政資源と『税務に関するコーポレートガバナンス』(その1)」
中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦
1 コンプライアンス違反に対する企業と国民の意識
近年、ガバナンス(企業統治)の問題が大きな注目を集めていることは言を俟たない。
企業不祥事に係る原因究明の際には、内部統制システムが適切に働いていなかった点などが必ず指摘され、組織ぐるみの不祥事隠蔽が、企業価値減少という多大な損害をもたらした多くの事例がある。こうした企業不祥事は、これらの企業に、「コンプライアンス」、すなわち法令遵守の体制が定着していないことの表れであるといえよう。
三菱自動車のリコール隠し問題や、東芝の不正会計、マクドナルドの食品偽装問題など、大手企業のコンプライアンス違反に係る事例も枚挙に暇がない。それらの各種報道を通じて、消費者も企業コンプライアンスや、コーポレートガバナンスについて関心を抱いていることであろう。
このような企業不祥事の絶えない中、コーポレートガバナンスは、アベノミクスの議論の中において一層注目を浴びてきた。
例えば、平成27年6月30日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015―未来への投資・生産性革命―」において、「産業の新陳代謝を加速し、未来に向けた投資を増やしていくためには、最終的には、企業経営者自らの大胆な決断こそが必要」であるとし、そのためのアクションプランの1つとしてコーポレートガバナンスの強化が再確認されている。
また、経済産業省は、神田秀樹教授(東京大学)を座長とする「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」においてコーポレートガバナンスのあり方を検討してきており、平成27年7月24日に、その研究成果を「コーポレート・ガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革~」として公表するなどしている。
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