酒井克彦の
〈深読み◆租税法〉
【第54回】
「国会審議から租税法条文を読み解く(その3)」
中央大学商学部教授・法学博士
酒井 克彦
《(その1)はこちら》
はじめに
Ⅰ 雑損控除の意義
Ⅱ 雪下ろし費用に係る雑損控除の適用-国会答弁で国税庁の取扱いが決定
《(その2)はこちら》
Ⅲ 雪下ろし費用の雑損控除の論拠
1 2つの解釈論的アプローチ
2 損失拡大未然防止説の問題点
(3) 控除対象の拡張路線
損失拡大未然防止説の更なる問題点を国会審議から導き出してみたい。
昭和52年11月2日付け第82回国会衆議院・建設委員会において、大蔵省の梅澤節男主税局総務課長(当時。後の第20代国税庁長官)は次のように説明している。
豪雪地帯の税制上の優遇措置について各種の御指摘があったことは事実でございますが、その後どういう処置をとったかということについて御報告申し上げますと、まず御案内のとおり、現在所得税で雑損控除の制度がございます。従来は、豪雪地帯の家屋の倒壊を防止するという見地から、屋根の雪でございますね、雪おろし費用については雑損控除の対象にしておったわけでございますが、委員初め各委員会で豪雪地帯の税制上の優遇措置につきまして各種の御指摘がございましたので、52年分の所得から、つまりことしの1月以降そういう事態が起こった場合には、従来より雑損控除の範囲を広げまして、家屋倒壊を防止するための屋根の雪だけではなくて、家屋の外周の雪並びにその雪を除去するための費用、これを雑損控除の対象にする、52年分所得税からこれを適用するということにいたしております。〔下線筆者〕
また、昭和61年2月7日付け第104回参議院・災害対策特別委員会において、大蔵省の小川是主税局税制第一課長(当時。後の第28代国税庁長官)は、屋根の雪下ろし費用に加え、「家屋の外周の雪の取除き」のみならず、「取り除いた雪の河川等への投棄のために要した支出」までも雑損控除の対象となる旨答弁している。
なお、その前年、昭和60年3月7日付け第102回国会衆議院・予算委員会第8分科会において、国税庁の岡本吉司所得税課長(当時)も同旨の発言をしていたところである。
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