企業結合会計を学ぶ
【第3回】
「取得原価の算定方法の概要」
公認会計士 阿部 光成
Ⅰ はじめに
【第2回】に引き続き、吸収合併の〔例〕を用いて、「取得」の会計処理における取得原価の算定方法の概要について解説する。
なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。
Ⅱ 吸収合併
〔例〕
次の条件による吸収合併を行った(会社法2条27号)。
① A社(存続会社、取得企業)はB社(消滅会社、被取得企業)を吸収合併した(結合分離適用指針5項(1)(2))。
② A社(存続会社)が取得企業であると決定した(企業結合会計基準10項、18~22項)。
③ A社がB社から受け入れた資産及び引き受けた負債(諸資産)の時価は900であった。
④ 合併直前のB社の資産及び負債(諸資産)の帳簿価額は700であった。
⑤ A社はB社の株主にA社の株式を交付した。交付されたA社の株式の時価は1,000であった。
A社(存続会社、取得企業)の吸収合併(取得)に関する会計処理は次のとおりである。
(※1) B社から受け入れた資産及び引き受けた負債(諸資産)の時価は900である[条件③]。
(※2) 交付されたA社の株式の時価は1,000である[条件⑤]。払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金、その他資本剰余金)は会社法の規定による。
(※3) のれん100は、資産及び引き受けた負債(諸資産)の時価900と交付されたA社の株式の時価1,000の差額である。
Ⅲ 取得原価の算定
1 基本的な考え方
「取得」とされた企業結合における取得原価の算定は、一般的な交換取引に関する会計処理と整合するように、次のように規定されている(企業結合会計基準84項)。
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