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[無料公開中]〔会計不正調査報告書を読む〕 【第57回】株式会社ブロードリーフ「調査委員会最終報告書(平成29年1月31日付)」

筆者:米澤 勝

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第57回】

株式会社ブロードリーフ

「調査委員会最終報告書(平成29年1月31日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【調査委員会の概要】

〔適時開示〕

〔調査委員会〕

【委員長】

常勤監査役 青木 伸也

【委 員】

弁護士 藤津 康彦

公認会計士 大塚 晃

公認会計士 松下 剛士

〔調査期間〕

2016(平成28)年10月28日から2017(平成29)年1月31日まで

〔調査の目的〕

① 本件不正行為に関する事案関係の調査

② 本件不正行為に類似する不正の有無の調査

③ 本件不正行為が当社の会計処理に及ぼす影響の調査

④ 発生原因の分析

⑤ 再発防止策の提言

〔適時開示(調査結果)〕

 

【株式会社ブロードリーフの概要】

株式会社ブロードリーフ(以下「ブロードリーフ」と略称する)は、2005(平成17)年12月創業、2009(平成21)年9月法人設立。業務支援用ソフトウエア・ITソリューションをはじめとする各種サービスの提供を主たる事業とする。資本金7,147百万円。売上高16,760百万円、税引前利益2,921百万円(数字は、いずれも平成28年12月期)。従業員数772名。本店所在地は東京都品川区。東京証券取引所1部上場。

 

【調査委員会報告書の概要】

1 発覚の経緯

最終報告書によれば、ブロードリーフが販売協力店等に対して支払う販売手数料及び顧客又はリース会社に対して支払う下取残債(※)に関する業務について、職務分掌による相互牽制の観点から、2015年に、業務部がすべての業務を担う体制から、残高管理業務を経理部に移管することとしたところ、当該移管の過程において、取引関係のない名義人の口座に対する支払いが行われていることが判明した(当初判明した金額は約310万円)ことを契機に社内調査を行ったところ、従業員Xによる支払処理が行われていた疑義が判明した。

(※) 下取残債とは、リース会社が顧客に代わって当社のシステムを購入し、当該リース会社からリースを受ける方法で当社のシステムを使用している顧客が、当社の旧システムから新システムに切り替える場合に、リース会社と顧客との間で締結しているリース契約に基づき顧客がリース会社に対して負担することとなる中途解約金支払債務又はリース料支払債務を、当社が顧客又はリース会社に対して負担することを合意することにより生じる当社の債務を意味する(最終報告書p.8)。

社内調査を進めた結果、Xによる不正は2006年5月~2013年6月までにわたって行われ、不正に送金した金額は6,000万円を超えることが判明したが、調査の途上でXは無断欠勤を続けて所在不明となり、ブロードリーフは9月30日付でXを懲戒解雇とした。

その後、ブロードリーフは、10月28日開催の取締役会において、本件不正行為に係る事実関係の調査等のために、常勤監査役に法律や会計に深い知見を有する外部専門家を加えた調査委員会を設置することを決議したものである。

なお、最終報告書の中では、Xが所在不明で懲戒解雇されていることから、「調査委員会は、X氏に対しては、インタビューを実施できていない」ことが述べられている。

 

2 調査結果の概要

(1) 本件不正行為の発生経緯最終報告書p.13以下)

Xは、2005年12月31日から2013年4月1日まで、当初は業務部販売在庫課課長代理として、2006年7月16日以降は課長として、販売手数料及び下取残債の支払業務全体を統括する立場にあり、他の役職員でこの支払業務の全容を把握している者はいなかった。

Xはこうした自身の立場を悪用し、本来は各営業所からの受注データ入力によって発生する販売手数料及び下取残債の支払業務を、受注データが入力されていないにもかかわらず追加で入力し、ブロードリーフとは取引関係のない名義人の口座を4口座利用して、振込金額を支払情報として追加入力することにより、不正な送金を行っていた。

(2) Xによる隠蔽工作

Xは、業務部長から作成した書類のもととなる資料を提出するように求められると、「確認作業に時間がかかること」や「支払総額が一致しているため確認の実益は乏しいこと」などを説明して資料の提出を回避して、業務部長の承認を得ていた。

また、内部監査室への異動後の不正送金は、Xが、元部下である後任の担当者に対し、「この件は経理部長も知っている案件である」などと述べて、支払先情報を追加で入力させたものである。

 

3 不正行為の発生原因最終報告書p.18以下)

調査委員会が、Xによる不正行為が発生し、かつ、長期間露見しなかった原因として認定した事象は、次の7つであった。

(1) 長期間にわたる業務の属人化

(2) 業務フロー等を記した社内規程等の不存在・業務フローの脆弱性

(3) 業務部における監督・牽制不足

(4) 支払先別の未払費用残高明細の不存在

(5) 内部監査室によるモニタリング・牽制不足

(6) 「取引先マスター」の網羅性の欠如

(7) ITシステム統制上の問題

 

この中でも、Xによる不正行為を長く発見できなかった理由の最大の原因は、(4)支払先別未払費用残高明細の不存在ではなかったかと思料する。最終報告書の一部を引用する。

当社では、未払費用残高の変動については経理部においてチェックをしていたものの、本件不正行為が実行された期間においては未払費用残高明細を作成していなかったことから、会計データの異常から本件不正行為を認識することができなかった。

(中略)特に販売手数料に関して、販売協力店等からの請求がないために長期間にわたって未払費用として滞留しているものが存在する状態が続いていた。その結果、未払費用残高の総額がマイナスとなる事態が過去に発生していなかった(以下略)

販売手数料は、各営業所での受注データ入力によって未払計上が行われるものの、実際には販売協力店等から請求がないものがあり、未払費用として多額の債務が滞留していたため、Xが支払データを追加入力して、販売手数料を過剰に支払ったとしても不正行為が発覚しなかったということであろうと考えるが、管理上は大いに問題である。

Xが不正行為を始めた2006年度は、ブロードリーフはMBO実施前で、翼システム株式会社が設立し、その後増資を引き受けたアイ・ティー・エックス株式会社の子会社となった時期と重なっているが、未払費用の支払先ごとの残高が把握できない状況で、決算を適正に行うことができたのだろうか。

 

4 会計処理に及ぼす影響最終報告書p.22

調査委員会が認定したXによる不正送金は、2006年度から2013年度までの8年間にわたり、計222回、61,689千円に及ぶ。年度別にみると、最も多いのは、2007年度の48回、15,249千円であり、Xが業務部から内部監査室に異動した後の2013年度においてもなお13回、3,601千円が不正に送金されていたことが判明している。

1回当たりの平均不正送金額は277千円程度で、販売手数料や下取残債の金額が大きくなり過ぎないように調整していたのではないかと推測できる。

なお、本件不正による損失について、調査委員会は、「2016年12月期第3四半期決算以前の各期の損益に与える影響額には重要性は認められない」として、「過年度の遡及修正は行わず、2016年12月期第4四半期に一括して処理すれば足りる」と判断している。

 

5 再発防止策の提言最終報告書p.23以下)

調査委員会は、本件不正発覚後、ブロードリーフでは、業務部と経理部とで支払リストと請求書との突合手続きを行い、未払費用残高管理業務を経理部へ移管する作業を進めるなど、「再発防止策がすでに一定程度進められている」と評価したうえで、さらなる再発防止策の提言として、以下の8項目を挙げている。

.業務フロー等の明確化・見直し

.定期的な人事ローテーションの実施

.支払先別の未払費用残高明細の継続的な更新及び確認

.内部監査体制の強化

.網羅的な「取引先マスター」の作成

.ITシステムによる統制の強化

.コンプライアンス教育の徹底

.断固たる措置

 

【調査報告書の特徴】

従業員不正の特徴として、「経理担当者の不正は単独犯」であることが多いが、「それ以外の部門担当者の不正には共犯者が必要」という特徴があると、筆者もセミナーなどでお話させていただくのであるが、本件は、会社の管理体制があまりにお粗末であったため、経理部門の犯行でないにもかかわらず、社内に共犯者を必要とせず、単独での不正が可能となった事例である(預金口座の名義を貸した協力者が社外にいたようだが)。

 

1 調査委員会の構成

不正行為の調査にあたり、ブロードリーフは、常勤監査役を委員長とし、外部の弁護士と公認会計士を委員とする調査委員会を設置した。常勤監査役を委員長とすることは、社内の情報収集や関係者へのヒアリングがスムースに進むなどのメリットが期待できることは否定しないが、本件においては、不正行為が行われていた期間である2007年3月に常勤監査役に就任し、その後ずっと常勤監査役の職務にある(付言すれば4,200株の株式を所有する株主でもある)青木伸也氏は、調査に利害関係を有する者であることは間違いなく、同氏を委員長としたことには疑問が残る。

最終報告書を公表した際のリリースで、同氏も他の複数の取締役同様月額報酬の10%を3ヶ月間減額する申出を行ったことが記載されているが、その一方で、最終報告書には、不正行為を防止できないばかりか、長く発見できなかった内部管理体制を放置してきた取締役やこれを監督できなかった監査役の責任について、まったく言及がないのは、うがった見方をすれば、常勤監査役を委員長とする調査委員会の構成に原因があるのではないだろうか。

 

2 再発防止策における「断固たる措置」

不正を行った従業員に対して厳正な処分を行うことで、不正への抑止力とすることを再発防止策として提言している報告書は多いが、最終報告書の記載は相当に厳しいものとなっている。以下に全文を引用する(調査報告書p.26)。

本件不正行為のような故意による不正行為を抑止するためには、「やり得」となることがないことを周知させるため、不正行為を行った役職員に対しては断固たる措置をとるという当社の姿勢を明確にすることが必要である。

すでに当社としてはX氏を懲戒解雇処分にしており、また、X氏の民事責任に関し、2016年12月26日付で東京地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した。さらに、刑事責任に関し、刑事告訴に向けて警察に相談中の状況ではあるが、今後も、可能な限り、同氏に対する責任追及を厳格に行っていくべきである。

もちろん、不正行為に対する責任は厳しく追及すべきである。ただ、不正実行者であるXが所在不明であり、元従業員の自殺というリスクを考慮しなければならない本件において、損害賠償請求や刑事告訴を行うことが、果たして、再発防止策につながるのであろうか。むしろ、経営陣が襟を正し、従業員に不正を起こさせない管理体制の構築に向けた決意を示すことの方が、再発防止策として有効なのではないかと思料する次第である。

しかし調査委員会の提言した「再発防止策」には

  • 経営陣自らが法令遵守の重要性を示す
  • 経営陣が率先垂範して、不正を許さない組織風土を醸成する

といった項目は見当たらない。

 

3 中間報告書の公表

最終報告書の公表に先立つ平成28年12月29日において、ブロードリーフは、調査委員会による中間報告書を公表している。この段階では、まだ、不正送金に使用された銀行預金口座の調査に協力が得られていないことから、「一部の調査の完了にはまだ時間を要する見込みである」ことを理由に作成されたようであるが、結果的に、調査が年末年始を挟むこととなってしまった状況で、当初予定していた調査終了時期が徒過して、投資家をはじめとするステークホルダーに不要な懸念を与えなかったという点で、中間報告書をこの時期に公表したことは評価していいのではないだろうか。

(了)

「会計不正調査報告書を読む」は、不定期の掲載となります。

連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第50回 ※クリックするとご覧いただけます。

第51回~

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筆者紹介

  • 米澤 勝

    (よねざわ・まさる)

    税理士・公認不正検査士(CFE)

    1997年12月 税理士試験合格
    1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
    1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
    2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
    2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

    【著書】

    ・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

    ・『架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2011)

    ・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

    【寄稿】

    ・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

    ・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

    【セミナー・講演等】

    一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
    「会計不正の早期発見
    ――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

    公益財団法人日本監査役協会主催
    情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

    株式会社プロフェッションネットワーク主催
    「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

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