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[無料公開中]〔会計不正調査報告書を読む〕 【第56回】モジュレ株式会社「第三者委員会調査報告書(中間)(平成28年10月21日付)」

筆者:米澤 勝

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第56回】

モジュレ株式会社

「第三者委員会調査報告書(中間)(平成28年10月21日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【第三者委員会の概要】

〔適時開示〕

〔第三者委員会〕

【委員長】

弁護士 吉田 秀康

【委 員】

弁護士 山岸 潤子
公認会計士 奥山 琢磨

〔調査期間〕

2016(平成28)年7月27日から10月21日まで

〔調査の目的〕

(1) 過年度における①無形固定資産に計上されているソフトウェアや賃貸用資産の一部を取得した際の取得価額の妥当性、②ソフトウェア仮勘定におけるソフトウェアの一部を取得した際の取得価額の妥当性、③一部取引先からの仕入計上の適切性、等の事実関係・原因究明の調査

(2) 上記事実関係の調査結果に基づき、過年度の会計処理の訂正の要否、及びその範囲・影響額等の確認

(3) 再発防止策の検討・提言、同種事例の有無の調査

〔適時開示(調査結果)〕

 

【モジュレ株式会社の概要】

モジュレ株式会社(以下「モジュレ」と略称する)は、1999(平成11)年設立、翌年4月事業開始。企業の情報システム部門業務のアウトソースサービスを主たる事業とする。資本金約304百万円。連結売上高2,115百万円、連結経常利益159百万円(数字は、いずれも訂正前の平成27年3月期)。従業員数62名(平成29年2月末現在)。本店所在地は東京都港区。東京証券取引所JASDAQ上場。

 

【調査委員会報告書の概要】

1 発覚の経緯

平成28年7月20日付リリース「第三者委員会の設置に関するお知らせ」によれば、外部からの指摘に基づき、監査役主導で行われた調査の結果、過年度の業績の一部に疑義があることが判明した、とのことである。「外部からの指摘」における「外部」とは誰を意味するのか、監査役による社内調査の結果はどのような内容であったのかについては、第三者委員会による調査報告書では明らかにされていない。

 

2 調査結果の概要

(1) 調査の対象とされた5件の取引(調査報告書p.4以下)

第三者委員会は、社内調査及び第三者委員会による抽出作業の結果として、次の5件の取引を調査対象とした。

取引1 資産の売却にかかる関連取引

取引2 仕入販売取引

取引3 期ずれ取引

取引4 事業用コンピューターの取得にかかる取引

取引5 ソフトウェアの取得にかかる取引

第三者委員会は、第三者委員会の委員選任が公表された日に退任を表明した、創業者である元代表取締役の松村明氏(以下「松村氏」と略称する)に対するヒアリングとモジュレから提供を受けた資料の分析を中心とした調査によって、以下のように認定した。

取引1取引2及び取引3については、売上を増加させるための架空取引又は架空循環取引であり、取引4の金銭の流れの中には、事業用コンピューターの購入にあたってメーカーから値引きを受けた金員を松村氏に収受させるための架空取引が存在している、と認定した。一方、取引5については、ソフトウェアが実在していなかったと認めることはできず、価格も不合理であるとまでは認められない、とした。

(2) 取引1から取引4が行われた主な原因(調査報告書p.18以下)

第三者委員会が松村氏からヒアリングしたところによれば、取引4で、松村氏に還流した303百万円の資金使途は、次の3点である。

 営業経費の精算

松村氏は、本来、モジュレが負担する営業活動費である、IT業界のビジネスに影響力のある人物から情報を収集するための支出を、領収書が受領できないという理由から、個人的に負担していた。

 借入金の返済

モジュレが大阪証券取引所に上場するに際して、分散していた株式を松村氏が買い取っていたところ、上場後、モジュレの株価が高値で取引されたことから、旧株主から買取額と上場後の取引価格との差額の支払いを求められたが、会社としての対応策が見つからないまま、松村氏が保有株式を担保に融資を受け、旧株主に補填を行ってきた。

 取引1及び取引2を実現するための資金負担

取引1及び取引2を実現するためには、取引参加者に一定の利益を補償する必要があり、そのための資金として、松村氏は、取引1において14百万円、取引2において6百万円を負担したことがわかっている。

*  *  *

上記のうちの資金負担は別として、及びはいずれも、本来であれば、代表取締役一人で抱え込む話ではなく、モジュレとしてどのような方策をとるべきかを検討すべきだった事象であったが、特にについては、「本来会社で対応すべき」と役員の意見が一致していながら、有効な解決策が見つからず、松村氏が個人で対応するほかなかった、というものであり、顧問弁護士や上場時の幹事証券会社など、外部にアドバイスを求めるという意見は出なかったのだろうか、という疑問は残る。

 

3 損益計算書及び貸借対照表の修正

10月25日、第三者委員会が提出した「参考情報」によれば、損益計算書の主要項目及び純資産額の修正内容は以下のとおりである(単位:百万円)。

【平成26年3月期】

修正前 修正金額 修正後 売上高 2,015 ▲109 1,906 経常利益 217 ▲22 194 税引前当期純利益 127 ▲65 61 純資産額 460 ▲65 394

【平成27年3月期】

修正前 修正金額 修正後 売上高 2,115 ▲169 1,946 経常利益 159 ▲32 126 税引前当期純利益 159 ▲93 66 純資産額 469 ▲159 310

いずれも、税引前当期純利益の減少幅が大きいことから、何らかの特別損失の計上が行われているものと推測できる。「調査報告書(中間)」に示された会計処理の修正方針では、取得したソフトウェアの減損、架空取引に係る売上・仕入の取消などに伴って増加した金銭債権に対する貸倒引当金の計上などが示されているが、具体的な修正の内容までは公表されていない。

 

【調査報告書の特徴】

モジュレが第三者委員会による「調査報告書(中間)」を受領したときには、すでに、上場廃止が決まっていたという、かなり特殊な事案である。「調査報告書(中間)」と、あえて最終報告書ではないことを明示したのは、調査の目的「(3)再発防止策の検討・提言」が報告書に織り込まれていないことに理由があるのではないかと推察するが、モジュレのウェブサイト上にあるIRニュースは、平成28年10月28日以降、更新されていないようであり、最終報告書が公表されることはなさそうである。

 

1 会計監査人の異動

モジュレが第三者委員会の設置を発表した2日後、モジュレの会計監査人であったアスカ監査法人が退任したことが公表される。アスカ監査法人は前年6月18日に就任したばかりで、一度も監査報告書を出さないままの辞任となった。辞任理由について、同リリースでは、

会計監査上、極めて重要な事実が意図的に開示されていなかったことが判明したことにより、監査約款に規定する「財務諸表等及び内部統制報告書の作成に関連すると委嘱者が認識している全ての情報を入手する機会」が提供されず、「委嘱者の役職員が受嘱者の業務遂行に誠実に対応しない場合等、受嘱者の委嘱者に対する信頼関係が著しく損なわれた場合」に該当する

ことを理由に挙げている。

この時期、アスカ監査法人が会計監査人に就任していた三社で、ほぼ同時に調査委員会が設置されるという事態が進行していた。うち一社は、本連載【第55回】で取り上げた株式会社メディビックグループ、モジュレと、もう一社はサイバーステップ株式会社であった。そして、サイバーステップ社以外の二社は、奇しくも、アスカ監査法人が退任⇒上場廃止という道程をたどることとなった。

ただし、上場廃止の理由は、メディビックグループ社が「売上高が所要額未満」であるのに対し、モジュレは「有価証券報告書提出遅延」ということであり、モジュレは、一時会計監査人の選定ができず 、有価証券報告書が提出できなかったことから、上場廃止になったものである 。

「監査難民」という言葉が流行語のように使われたのは、みすず監査法人(旧中央青山監査法人)が解散した2007年であったが、今回、モジュレが一時会計監査人を選定できないまま、上場廃止に至った本件を振り返って、久しぶりに、その言葉を思い出した次第である。

 

2 全取締役・全監査役の退任

代表取締役であった松村氏が、第三者委員会の委員選任を公表した日に退任を表明したことは前述のとおりだが、このとき、同時に、取締役4名、監査役3名の全員が、8月30日開催予定の定時株主総会の終結をもって退任することが発表されている。新経営体制の目的としては、「今般の疑義を契機として、経営陣を刷新することによって、抜本的にコンプライアンス・ガバナンス体制を見直し、その上で経営管理機能を強化すること」が挙げられている。

なお、退任予定取締役のうち1名は、定時株主総会の終結を待たず、8月24日に、「一身上の都合により」辞任したことが公表された

 

3 上場廃止と課徴金納付命令の勧告

モジュレが上場廃止になった経緯はすでに述べたとおり、一時会計監査人を選定できておらず、また、第三者委員会の調査も未了であることから、有価証券報告書を法定提出期限の経過後1ヶ月以内(平成28年9月30日)に提出できなかったため、1ヶ月の整理銘柄指定期間を経て、11月1日に上場が廃止されたものである。

一方、証券取引等監視委員会は、10月28日、モジュレについて、1,956万円の課徴金納付命令を発出するよう、勧告を行った 。法律違反の事実関係は次のとおりである(一部抜粋)。

モジュレ株式会社は、当社が公表した平成27年3月期の業績予想を達成するため、サーバー等の販売について循環取引などを行うことによって架空売上を計上し、金融商品取引法第172条の4第1項に規定する「重要な事項につき虚偽の記載」がある平成27年3月期に係る有価証券報告書を平成27年6月18日に関東財務局長に提出したものである。

この課徴金納付命令の勧告を受けて、モジュレは、同日、以下のようなリリース を出した。

当社は、証券取引等監視委員会から勧告が行われたことを真摯に受け止め、金融庁から正式な通知を受領次第、対応について検討いたしますが、特段の事情がない限り事実及び納付すべき課徴金の額を認める方針であり、正式に決定次第改めてお知らせいたします。
株主、投資家の皆様をはじめとする関係者の皆様には、多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、改めて深くお詫び申し上げます。

10月28日に公表された本リリース「証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告について」を最後に、モジュレのIRニュースの更新は停止したままである。

(了)

「会計不正調査報告書を読む」は、不定期の掲載となります。

連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第50回 ※クリックするとご覧いただけます。

第51回~

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筆者紹介

  • 米澤 勝

    (よねざわ・まさる)

    税理士・公認不正検査士(CFE)

    1997年12月 税理士試験合格
    1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
    1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
    2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
    2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

    【著書】

    ・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

    ・『架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2011)

    ・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

    【寄稿】

    ・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

    ・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

    【セミナー・講演等】

    一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
    「会計不正の早期発見
    ――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

    公益財団法人日本監査役協会主催
    情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

    株式会社プロフェッションネットワーク主催
    「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

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