公開日: 2020/02/13 (掲載号:No.356)
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〔会計不正調査報告書を読む〕 【第96回】東洋インキSCホールディングス株式会社「特別調査委員会調査報告書(2019年12月11日付)」

筆者: 米澤 勝

〔会計不正調査報告書を読む〕

【第96回】

東洋インキSCホールディングス株式会社

「特別調査委員会調査報告書(2019年12月11日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【特別調査委員会の概要】

〔適時開示〕

〔特別調査委員会〕

【委員長】

甘利 公人(当社社外取締役、弁護士)

【委 員】

荒張 健(公認会計士)

平尾 覚(弁護士)

特別調査委員会は、EY新日本有限責任監査法人から金子昌嗣公認会計士、吉田靖孝公認会計士、東万里子他50名、西村あさひ法律事務所から鈴木悠介弁護士、秋吉諒弁護士他3名を、調査の補助者として起用した。

〔調査期間〕

2019年9月24日から12月8日まで

〔委嘱事項〕

当社の連結子会社であるフィリピン共和国所在のTOYO INK COMPOUNDS CORP(TICC)において、同社のフィリピン人社員による不適切な会計処理の可能性に関する、以下の事項。

(1) 本件不正に関する事実関係の調査

(2) 本件不正に類似する案件の存否

(3) 本件不正による連結財務諸表への影響額の確定

(4) 本件不正が生じた原因の究明及び再発防止策の提言

〔調査結果〕

 

【東洋インキSCホールディングス株式会社の概要】

東洋インキSCホールディングス株式会社(以下「東洋インキHD」と略称する)は、1896(明治29)年創業、1907(明治40)年設立。塗料、樹脂などの化学製品の製造販売を行う事業会社の持株会社としてグループの戦略立案及び各事業会社の統括管理を行っている。

連結子会社は62社、持分法適用関連会社7社を有する。売上高290,208百万円、経常利益15,508百万円、資本金31,733百万円。従業員数8,274名(いずれも訂正前の2018年12月期、連結ベース)。本店所在地は東京都中央区。東京証券取引所1部上場。会計監査人は有限責任監査法人トーマツ(以下「トーマツ」という)。

調査の対象となったTICCは、1997年にフィリピンで設立され、その事業領域は、東洋インキHDの事業のうち、「色材・機能材関連事業」に分類され、受託加工が売上の約8割を占めている。

 

【調査報告書の概要】

1 特別調査委員会設置の経緯

2019年8月14日、東洋インキHDのフィリピン子会社であるTICCの社長を務めるB氏が、フィリピンの現地銀行リサール商業銀行の担当者に対し、バンク・オブ・ザ・フィリピン・アイランズからの借換えを相談したところ、同担当者から、既にTICCは同行から借入をしている事実、同時点での借入残高が47百万米ドルである旨を告げられた。

B氏は、TICCが同行から借入を行っているとの認識を有していなかったため、同月26日、上記事実を東洋インキHDに報告し、東洋インキHDが事実確認を進めたところ、みずほ銀行からの借入についても、実際の借入額が、連結パッケージによる報告上の借入額よりも70万米ドル過大であることが判明した。

上記事態を受け、東洋インキHDが、TICCにおいて、財務・経理部門のシニアマネージャーとして、同部門の責任者を務めていたA氏に対して事実確認を行ったところ、遅くとも2004年頃から、赤字決算を回避するために、売上原価(原料費)を過少に計上し、仕入先に支払う原料の代金をまかなうために簿外で借入を行っていた旨説明するに至った。

A氏の説明を受け、東洋インキHDは、透明性の高い実効的な調査を実施するべく、社外取締役に加えて、社外の専門家から構成される調査委員会を設置し、調査を依頼したものである。

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第96回】

東洋インキSCホールディングス株式会社

「特別調査委員会調査報告書(2019年12月11日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【特別調査委員会の概要】

〔適時開示〕

〔特別調査委員会〕

【委員長】

甘利 公人(当社社外取締役、弁護士)

【委 員】

荒張 健(公認会計士)

平尾 覚(弁護士)

特別調査委員会は、EY新日本有限責任監査法人から金子昌嗣公認会計士、吉田靖孝公認会計士、東万里子他50名、西村あさひ法律事務所から鈴木悠介弁護士、秋吉諒弁護士他3名を、調査の補助者として起用した。

〔調査期間〕

2019年9月24日から12月8日まで

〔委嘱事項〕

当社の連結子会社であるフィリピン共和国所在のTOYO INK COMPOUNDS CORP(TICC)において、同社のフィリピン人社員による不適切な会計処理の可能性に関する、以下の事項。

(1) 本件不正に関する事実関係の調査

(2) 本件不正に類似する案件の存否

(3) 本件不正による連結財務諸表への影響額の確定

(4) 本件不正が生じた原因の究明及び再発防止策の提言

〔調査結果〕

 

【東洋インキSCホールディングス株式会社の概要】

東洋インキSCホールディングス株式会社(以下「東洋インキHD」と略称する)は、1896(明治29)年創業、1907(明治40)年設立。塗料、樹脂などの化学製品の製造販売を行う事業会社の持株会社としてグループの戦略立案及び各事業会社の統括管理を行っている。

連結子会社は62社、持分法適用関連会社7社を有する。売上高290,208百万円、経常利益15,508百万円、資本金31,733百万円。従業員数8,274名(いずれも訂正前の2018年12月期、連結ベース)。本店所在地は東京都中央区。東京証券取引所1部上場。会計監査人は有限責任監査法人トーマツ(以下「トーマツ」という)。

調査の対象となったTICCは、1997年にフィリピンで設立され、その事業領域は、東洋インキHDの事業のうち、「色材・機能材関連事業」に分類され、受託加工が売上の約8割を占めている。

 

【調査報告書の概要】

1 特別調査委員会設置の経緯

2019年8月14日、東洋インキHDのフィリピン子会社であるTICCの社長を務めるB氏が、フィリピンの現地銀行リサール商業銀行の担当者に対し、バンク・オブ・ザ・フィリピン・アイランズからの借換えを相談したところ、同担当者から、既にTICCは同行から借入をしている事実、同時点での借入残高が47百万米ドルである旨を告げられた。

B氏は、TICCが同行から借入を行っているとの認識を有していなかったため、同月26日、上記事実を東洋インキHDに報告し、東洋インキHDが事実確認を進めたところ、みずほ銀行からの借入についても、実際の借入額が、連結パッケージによる報告上の借入額よりも70万米ドル過大であることが判明した。

上記事態を受け、東洋インキHDが、TICCにおいて、財務・経理部門のシニアマネージャーとして、同部門の責任者を務めていたA氏に対して事実確認を行ったところ、遅くとも2004年頃から、赤字決算を回避するために、売上原価(原料費)を過少に計上し、仕入先に支払う原料の代金をまかなうために簿外で借入を行っていた旨説明するに至った。

A氏の説明を受け、東洋インキHDは、透明性の高い実効的な調査を実施するべく、社外取締役に加えて、社外の専門家から構成される調査委員会を設置し、調査を依頼したものである。

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連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第140回 ※クリックするとご覧いただけます。

第141回~

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

関連書籍

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