公開日: 2021/07/15 (掲載号:No.428)
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〔会計不正調査報告書を読む〕 【第115回】アジア開発キャピタル株式会社「特別調査委員会調査報告書(2021年6月21日付)」

筆者: 米澤 勝

〔会計不正調査報告書を読む〕

【第115回】

アジア開発キャピタル株式会社

「特別調査委員会調査報告書(2021年6月21日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【アジア開発キャピタル株式会社特別調査委員会の概要】

〔適時開示〕

〔特別調査委員会〕

【委員長】

奥津 泰彦(公認会計士)

【委 員】

梶谷 篤(弁護士)

後藤 登(公認会計士・弁護士)

【補助委員】

塩野 治夫(公認会計士)

髙巢 遵(弁護士)

上田 慎(弁護士)

補助委員である塩野治夫氏は、特別調査委員会の設置前にも、第三者委員会の委員として選任されていた。

〔調査期間〕

2021年4月28日から同年6月20日まで

〔調査目的〕

(1) アジア開発キャピタル株式会社の子会社である株式会社トレードセブン、孫会社である株式会社TS Projectにおいて2017年11月から2019年4月までの期間に行われたリチウムイオン蓄電池取引に関する事実関係の調査及びかかる取引に関する会計処理の適正性の検証(本件)

(2) 本件が財務報告に与える影響の分析

(3) 本件の背景及び原因の分析

(4) 本件に関する再発防止策の提言

〔調査結果〕

 

【アジア開発キャピタル株式会社の概要】

アジア開発キャピタル株式会社(以下「ADC」と略称する)は、1922(大正11)年2月7日設立。創業時は倉庫業、運送業を営んでいたが、2004年頃から投資ビジネスに参入し、現在では投資事業、金融事業を主たる事業としている。連結売上高1,055百万円、連結経常損失802百万円、従業員数49人(いずれも訂正前の2020年3月期実績)。会計監査人はアスカ監査法人(2021年4月13日退任)、監査法人アリア。東京証券取引所2部上場。本店所在地は東京都中央区。なお、ADCのホームページの「会社概要」トップには次のような記載がある。

発展するアジア諸国と日本をつなぐプラットフォーム。それが私たちアジア開発キャピタルの役割です。日本とアジアをフィールドとしてグループの総合力と経験豊富な人材、そして多彩なリソースを活用し、企業への投資・助言を通じての企業価値向上を追求します。

ADCの子会社である株式会社トレードセブン(以下「T7」と略称する)は、2014(平成26)年8月1日設立。質屋事業、古物買取販売事業を営む。2017年11月、ADCは、質屋事業及び古物買取販売事業をグループの中核事業として位置付け、T7を完全子会社化した。

株式会社TS Project(以下「TP」と略称する)は、2018(平成30)年10月30日、T7が全額出資して、蓄電池取引に特化したSPCとして設立。2020年12月にT7が吸収合併して解散した。

 

【調査報告書の概要】

1 第三者委員会設置の経緯

2021年4月9日に公表した「第三者委員会の設置に関するお知らせ」で、ADCは、その設置の経緯について、次のように説明していた。

ADCは、子会社であるT7を通じてADC元取締役2名(元代表取締役社長の網屋信介氏と元取締役の髙瀬尚彦氏)が関係する複数の会社との間に不可解かつ不適切とも思われる取引が多数実在していることを社内調査によって確認したと同時に、会計処理が不適切に行われていたのではないかという疑義も発覚したため、当該不適切会計処理の事実関係解明及びその原因分析、並びにそれに類似する取引の有無の調査を行い、全容解明のために、第三者委員会の設置について決議したものである。

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第115回】

アジア開発キャピタル株式会社

「特別調査委員会調査報告書(2021年6月21日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【アジア開発キャピタル株式会社特別調査委員会の概要】

〔適時開示〕

〔特別調査委員会〕

【委員長】

奥津 泰彦(公認会計士)

【委 員】

梶谷 篤(弁護士)

後藤 登(公認会計士・弁護士)

【補助委員】

塩野 治夫(公認会計士)

髙巢 遵(弁護士)

上田 慎(弁護士)

補助委員である塩野治夫氏は、特別調査委員会の設置前にも、第三者委員会の委員として選任されていた。

〔調査期間〕

2021年4月28日から同年6月20日まで

〔調査目的〕

(1) アジア開発キャピタル株式会社の子会社である株式会社トレードセブン、孫会社である株式会社TS Projectにおいて2017年11月から2019年4月までの期間に行われたリチウムイオン蓄電池取引に関する事実関係の調査及びかかる取引に関する会計処理の適正性の検証(本件)

(2) 本件が財務報告に与える影響の分析

(3) 本件の背景及び原因の分析

(4) 本件に関する再発防止策の提言

〔調査結果〕

 

【アジア開発キャピタル株式会社の概要】

アジア開発キャピタル株式会社(以下「ADC」と略称する)は、1922(大正11)年2月7日設立。創業時は倉庫業、運送業を営んでいたが、2004年頃から投資ビジネスに参入し、現在では投資事業、金融事業を主たる事業としている。連結売上高1,055百万円、連結経常損失802百万円、従業員数49人(いずれも訂正前の2020年3月期実績)。会計監査人はアスカ監査法人(2021年4月13日退任)、監査法人アリア。東京証券取引所2部上場。本店所在地は東京都中央区。なお、ADCのホームページの「会社概要」トップには次のような記載がある。

発展するアジア諸国と日本をつなぐプラットフォーム。それが私たちアジア開発キャピタルの役割です。日本とアジアをフィールドとしてグループの総合力と経験豊富な人材、そして多彩なリソースを活用し、企業への投資・助言を通じての企業価値向上を追求します。

ADCの子会社である株式会社トレードセブン(以下「T7」と略称する)は、2014(平成26)年8月1日設立。質屋事業、古物買取販売事業を営む。2017年11月、ADCは、質屋事業及び古物買取販売事業をグループの中核事業として位置付け、T7を完全子会社化した。

株式会社TS Project(以下「TP」と略称する)は、2018(平成30)年10月30日、T7が全額出資して、蓄電池取引に特化したSPCとして設立。2020年12月にT7が吸収合併して解散した。

 

【調査報告書の概要】

1 第三者委員会設置の経緯

2021年4月9日に公表した「第三者委員会の設置に関するお知らせ」で、ADCは、その設置の経緯について、次のように説明していた。

ADCは、子会社であるT7を通じてADC元取締役2名(元代表取締役社長の網屋信介氏と元取締役の髙瀬尚彦氏)が関係する複数の会社との間に不可解かつ不適切とも思われる取引が多数実在していることを社内調査によって確認したと同時に、会計処理が不適切に行われていたのではないかという疑義も発覚したため、当該不適切会計処理の事実関係解明及びその原因分析、並びにそれに類似する取引の有無の調査を行い、全容解明のために、第三者委員会の設置について決議したものである。

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連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第140回 ※クリックするとご覧いただけます。

第141回~

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

関連書籍

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