〔会計不正調査報告書を読む〕
【第115回】
アジア開発キャピタル株式会社
「特別調査委員会調査報告書(2021年6月21日付)」
税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝
【アジア開発キャピタル株式会社特別調査委員会の概要】
〔適時開示〕
- 2021年4月9日
「第三者委員会の設置に関するお知らせ」 - 同年4月16日
「第三者委員会の委員の選任に関するお知らせ」 - 同年4月28日
「第三者委員会の解散及び特別調査委員会の設置に関するお知らせ」
〔特別調査委員会〕
【委員長】
奥津 泰彦(公認会計士)
【委 員】
梶谷 篤(弁護士)
後藤 登(公認会計士・弁護士)
【補助委員】
塩野 治夫(公認会計士)
髙巢 遵(弁護士)
上田 慎(弁護士)
補助委員である塩野治夫氏は、特別調査委員会の設置前にも、第三者委員会の委員として選任されていた。
〔調査期間〕
2021年4月28日から同年6月20日まで
〔調査目的〕
(1) アジア開発キャピタル株式会社の子会社である株式会社トレードセブン、孫会社である株式会社TS Projectにおいて2017年11月から2019年4月までの期間に行われたリチウムイオン蓄電池取引に関する事実関係の調査及びかかる取引に関する会計処理の適正性の検証(本件)
(2) 本件が財務報告に与える影響の分析
(3) 本件の背景及び原因の分析
(4) 本件に関する再発防止策の提言
〔調査結果〕
- 2021年6月22日
「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」
「本日付東証適時開示「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」についての補足」 - 同年6月30日
「過年度の決算短信の訂正に関するお知らせ」
【アジア開発キャピタル株式会社の概要】
アジア開発キャピタル株式会社(以下「ADC」と略称する)は、1922(大正11)年2月7日設立。創業時は倉庫業、運送業を営んでいたが、2004年頃から投資ビジネスに参入し、現在では投資事業、金融事業を主たる事業としている。連結売上高1,055百万円、連結経常損失802百万円、従業員数49人(いずれも訂正前の2020年3月期実績)。会計監査人はアスカ監査法人(2021年4月13日退任)、監査法人アリア。東京証券取引所2部上場。本店所在地は東京都中央区。なお、ADCのホームページの「会社概要」トップには次のような記載がある。発展するアジア諸国と日本をつなぐプラットフォーム。それが私たちアジア開発キャピタルの役割です。日本とアジアをフィールドとしてグループの総合力と経験豊富な人材、そして多彩なリソースを活用し、企業への投資・助言を通じての企業価値向上を追求します。
ADCの子会社である株式会社トレードセブン(以下「T7」と略称する)は、2014(平成26)年8月1日設立。質屋事業、古物買取販売事業を営む。2017年11月、ADCは、質屋事業及び古物買取販売事業をグループの中核事業として位置付け、T7を完全子会社化した。
株式会社TS Project(以下「TP」と略称する)は、2018(平成30)年10月30日、T7が全額出資して、蓄電池取引に特化したSPCとして設立。2020年12月にT7が吸収合併して解散した。
【調査報告書の概要】
1 第三者委員会設置の経緯
2021年4月9日に公表した「第三者委員会の設置に関するお知らせ」で、ADCは、その設置の経緯について、次のように説明していた。
ADCは、子会社であるT7を通じてADC元取締役2名(元代表取締役社長の網屋信介氏と元取締役の髙瀬尚彦氏)が関係する複数の会社との間に不可解かつ不適切とも思われる取引が多数実在していることを社内調査によって確認したと同時に、会計処理が不適切に行われていたのではないかという疑義も発覚したため、当該不適切会計処理の事実関係解明及びその原因分析、並びにそれに類似する取引の有無の調査を行い、全容解明のために、第三者委員会の設置について決議したものである。
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