公開日: 2015/11/26 (掲載号:No.146)
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〔会計不正調査報告書を読む〕 【第40回】株式会社東芝「役員責任調査委員会調査報告書(平成27年11月9日付)」

筆者: 米澤 勝

〔会計不正調査報告書を読む〕

【第40回】

株式会社東芝

「役員責任調査委員会調査報告書(平成27年11月9日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

株式会社東芝(以下「東芝」という)は、平成27年11月7日「役員責任調査委員会の調査報告書の受領及び当社元役員に対する損害賠償訴訟の提起並びに米国における訴訟等に関するお知らせ」と題するリリースを公表、週が明けた9日には役員責任調査委員会の調査報告書を公表した。

本稿では、東芝が、平成27年9月7日に過年度決算の修正を発表した後、元取締役5名に対する損害賠償請求に至った経緯を確認したうえで、報告書における役員の責任追及について検討することとしたい。

【元役員5人に対し損害賠償請求訴訟を提起するまでの経緯】
公表日 リリース内容・公表事項 損益修正 4月3日 特別調査委員会の設置(工事進行基準に係る会計処理の適正性) 不明 5月8日 決算発表延期(業績予想の修正、剰余金配当の見送り、第三者委員会の設置) 不明 5月13日 現時点で判明している過年度修正額見込み ▲500億円 5月29日 有価証券報告書提出期限延長 - 6月12日 自主チェック結果、特別調査委員会の調査概要 ▲548億円 6月25日 定時株主総会 - 7月20日 第三者委員会調査報告書の受領及び過年度決算の修正における当社の対応について ▲1,518億円 7月29日 第三者委員会の調査報告の結果を受けた当社の対応等について - 8月31日 有価証券報告書の提出期限延長(再延長) - 9月7日 過年度決算の修正、有価証券報告書の提出 ▲2,248億円 9月14日 東京証券取引所による特設注意市場銘柄指定及び上場契約違約金徴求 - 9月17日 役員責任調査委員会の設置 - 9月30日 臨時株主総会 - 11月7日 役員責任調査委員会の調査結果受領、元社長ら5人に対し損害賠償請求 - 11月9日 役員責任調査委員会調査報告書公表 -

 

【役員責任調査委員会の概要】

〔適時開示(委員会設置)〕

〔役員責任調査委員会〕

委員長:大内 捷司(弁護士、元札幌高裁長官)

委 員:藤村 啓(弁護士、元東京高裁部総括判事)

委 員:山口 幹生(弁護士、元広島地検次席検事)

〔調査期間〕

2015(平成27)年9月17日から11月6日まで

〔設置の目的〕

不適切な会計処理が認められた2008年度から2014年度第3四半期までの間に取締役又は執行役であった者において、その職務執行に関して任務懈怠責任があったか否かを含め、当社が適切かつ公正な判断を行うために、監査委員会に対する報告、提言を行うこと

〔適時開示〕

 

【調査報告書の特徴】

1 調査手法

役員責任調査委員会(以下「調査委員会」という)の調査対象となった取締役・執行役(以下「対象役員」という)の総数は98名。調査委員会は、第三者委員会調査報告書が指摘した不適切会計に係る案件につき、対象役員へのヒアリングや書面照会により事実関係の聴取・確認を行うなどの方法で、調査を進めた。

具体的には、不適切会計の案件のうち、対象役員の善管注意義務違反等の法的責任が認められるかどうかの判断を行った後、それぞれの案件に関与した対象役員について、法的責任の有無を判断したものである。

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第40回】

株式会社東芝

「役員責任調査委員会調査報告書(平成27年11月9日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

株式会社東芝(以下「東芝」という)は、平成27年11月7日「役員責任調査委員会の調査報告書の受領及び当社元役員に対する損害賠償訴訟の提起並びに米国における訴訟等に関するお知らせ」と題するリリースを公表、週が明けた9日には役員責任調査委員会の調査報告書を公表した。

本稿では、東芝が、平成27年9月7日に過年度決算の修正を発表した後、元取締役5名に対する損害賠償請求に至った経緯を確認したうえで、報告書における役員の責任追及について検討することとしたい。

【元役員5人に対し損害賠償請求訴訟を提起するまでの経緯】
公表日 リリース内容・公表事項 損益修正 4月3日 特別調査委員会の設置(工事進行基準に係る会計処理の適正性) 不明 5月8日 決算発表延期(業績予想の修正、剰余金配当の見送り、第三者委員会の設置) 不明 5月13日 現時点で判明している過年度修正額見込み ▲500億円 5月29日 有価証券報告書提出期限延長 - 6月12日 自主チェック結果、特別調査委員会の調査概要 ▲548億円 6月25日 定時株主総会 - 7月20日 第三者委員会調査報告書の受領及び過年度決算の修正における当社の対応について ▲1,518億円 7月29日 第三者委員会の調査報告の結果を受けた当社の対応等について - 8月31日 有価証券報告書の提出期限延長(再延長) - 9月7日 過年度決算の修正、有価証券報告書の提出 ▲2,248億円 9月14日 東京証券取引所による特設注意市場銘柄指定及び上場契約違約金徴求 - 9月17日 役員責任調査委員会の設置 - 9月30日 臨時株主総会 - 11月7日 役員責任調査委員会の調査結果受領、元社長ら5人に対し損害賠償請求 - 11月9日 役員責任調査委員会調査報告書公表 -

 

【役員責任調査委員会の概要】

〔適時開示(委員会設置)〕

〔役員責任調査委員会〕

委員長:大内 捷司(弁護士、元札幌高裁長官)

委 員:藤村 啓(弁護士、元東京高裁部総括判事)

委 員:山口 幹生(弁護士、元広島地検次席検事)

〔調査期間〕

2015(平成27)年9月17日から11月6日まで

〔設置の目的〕

不適切な会計処理が認められた2008年度から2014年度第3四半期までの間に取締役又は執行役であった者において、その職務執行に関して任務懈怠責任があったか否かを含め、当社が適切かつ公正な判断を行うために、監査委員会に対する報告、提言を行うこと

〔適時開示〕

 

【調査報告書の特徴】

1 調査手法

役員責任調査委員会(以下「調査委員会」という)の調査対象となった取締役・執行役(以下「対象役員」という)の総数は98名。調査委員会は、第三者委員会調査報告書が指摘した不適切会計に係る案件につき、対象役員へのヒアリングや書面照会により事実関係の聴取・確認を行うなどの方法で、調査を進めた。

具体的には、不適切会計の案件のうち、対象役員の善管注意義務違反等の法的責任が認められるかどうかの判断を行った後、それぞれの案件に関与した対象役員について、法的責任の有無を判断したものである。

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連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第150回 ※クリックするとご覧いただけます。

第151回~

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

関連書籍

「おかしな数字」をパッと見抜く会計術

公認会計士 山岡信一郎 著

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全国社会福祉法人会計研究会 編著

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