公開日: 2024/09/05 (掲載号:No.584)
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〔会計不正調査報告書を読む〕 【第159回】学校法人東京女子医科大学「第三者委員会調査報告書(公表版)(2024年8月2日付)」(前編)

筆者: 米澤 勝

〔会計不正調査報告書を読む〕

【第159回】

学校法人東京女子医科大学

「第三者委員会調査報告書(公表版)(2024年8月2日付)」
(前編)

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【学校法人東京女子医科大学第三者委員会の概要】

〔お知らせ〕

〔第三者委員会の構成〕

【委員長】

山上 秀明(弁護士・元最高検察庁次長検事)

【副委員長】

竹内 朗(弁護士・公認不正検査土、プロアクト法律事務所)

【委 員】

三木 義一(弁護士・元青山学院大学学長)

清水 真一郎(弁護士・公認不正検査士、渥美坂井法律事務所)

【調査補助者】

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業

土居文代、宮西啓介、船橋桃子、粟野記代、瀬川慶、西尾順一、及川泰輔、幕田怜輔、安中允彦、金田耕一の合計10名の弁護土ほかパラリーガル

A&S福岡法律事務所弁護士法人

磯部慎吾、柴田啓介、杉本賢太、光山夏貴の合計4名の弁護士

プロアクト法律事務所

池永朝昭、徳山佳祐、田中伸英、岩渕恵理、神田詠守、中島永祥の合計6名の弁護士

太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社

垂水敬、前村浩介、今枝侑子、芝啓真、大園和登、その他の合計58名の公認会計士、公認不正検査士等

〔調査期間〕

2024年4月10日から7月31日まで

〔第三者委員会への委嘱事項〕

(1) 出向者に対する二重給与その他不正支出の有無及びその状況の調査

(2) 上記(1)に関する内部統制ないしガバナンス上の問題の有無及びその状況の調査

(3) 上記(1)及び(2)に問題が認められた場合、その原因分析及び再発防止策の提言等

〔調査結果〕

 

【学校法人東京女子医科大学の概要】

学校法人東京女子医科大学(以下、「女子医大」と略称する)は、1900年、創立者である吉岡彌生によって、東京女醫學校として創立され、1951年に学校法人東京女子医科大学として認可された。教育機関として、大学及び大学院のほか、看護専門学校を持つとともに、東京女子医科大学病院のほか4箇所の医療センター等を傘下に有している。日本で唯一の女子医科大学である。調査報告書公表時点の理事長は岩本絹子氏(以下「岩本理事長」と略称する)。公表されている「令和5年度事業報告書」によれば、教育活動収入82,459百万円に対して教育活動支出は88,571百万円で、収支差額は△6,112百万円。2023年度収支差額についても△9,301百万円と、一般事業会社でいうところの「赤字経営」となっている。2023年5月1日現在の学生数は1,363人に対し、教員数は1,877人、職員数は3,327人(うち医療系職員が2,752人)となっている。

一般社団法人至誠会(以下「至誠会」と略称する)は、女子医大の同窓会組織であり、前身である社団法人至誠会は、東京女醫學校創立者吉岡彌生により寄贈された資産を基に、「社会事業・公衆衛生に関する諸般の施設及び運営をなし、国民福祉の増進を図ること」を目的とし、東京女醫學校、東京女子医学専門学校、女子医大の卒業生を会員とした同窓会組織として、1926年に公益法人として登録され、2011年、一般社団法人に移行したものである。2024年3月末現在、女子医大同窓会として47都道府県に支部を有し、正会員約4,600名、準会員668名を有している。

 

【第三者委員会による調査報告書の概要】

1 第三者委員会設置の経緯

2024年3月29日、女子医大は、「本学関係者の皆様へ」というお知らせをリリースして、警視庁による捜索が行われたことを公表した。報道によれば、女子医大の同窓会組織である至誠会から、勤務実態が認められない職員に対し給与が支払われていた、又は、職員が別の会社で働き始めた後も二重に給与が支払われていたなどという容疑で、警視庁が、女子医大などの関係各所に一斉捜索(強制捜査)を行ったとのことであった。

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第159回】

学校法人東京女子医科大学

「第三者委員会調査報告書(公表版)(2024年8月2日付)」
(前編)

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【学校法人東京女子医科大学第三者委員会の概要】

〔お知らせ〕

〔第三者委員会の構成〕

【委員長】

山上 秀明(弁護士・元最高検察庁次長検事)

【副委員長】

竹内 朗(弁護士・公認不正検査土、プロアクト法律事務所)

【委 員】

三木 義一(弁護士・元青山学院大学学長)

清水 真一郎(弁護士・公認不正検査士、渥美坂井法律事務所)

【調査補助者】

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業

土居文代、宮西啓介、船橋桃子、粟野記代、瀬川慶、西尾順一、及川泰輔、幕田怜輔、安中允彦、金田耕一の合計10名の弁護土ほかパラリーガル

A&S福岡法律事務所弁護士法人

磯部慎吾、柴田啓介、杉本賢太、光山夏貴の合計4名の弁護士

プロアクト法律事務所

池永朝昭、徳山佳祐、田中伸英、岩渕恵理、神田詠守、中島永祥の合計6名の弁護士

太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社

垂水敬、前村浩介、今枝侑子、芝啓真、大園和登、その他の合計58名の公認会計士、公認不正検査士等

〔調査期間〕

2024年4月10日から7月31日まで

〔第三者委員会への委嘱事項〕

(1) 出向者に対する二重給与その他不正支出の有無及びその状況の調査

(2) 上記(1)に関する内部統制ないしガバナンス上の問題の有無及びその状況の調査

(3) 上記(1)及び(2)に問題が認められた場合、その原因分析及び再発防止策の提言等

〔調査結果〕

 

【学校法人東京女子医科大学の概要】

学校法人東京女子医科大学(以下、「女子医大」と略称する)は、1900年、創立者である吉岡彌生によって、東京女醫學校として創立され、1951年に学校法人東京女子医科大学として認可された。教育機関として、大学及び大学院のほか、看護専門学校を持つとともに、東京女子医科大学病院のほか4箇所の医療センター等を傘下に有している。日本で唯一の女子医科大学である。調査報告書公表時点の理事長は岩本絹子氏(以下「岩本理事長」と略称する)。公表されている「令和5年度事業報告書」によれば、教育活動収入82,459百万円に対して教育活動支出は88,571百万円で、収支差額は△6,112百万円。2023年度収支差額についても△9,301百万円と、一般事業会社でいうところの「赤字経営」となっている。2023年5月1日現在の学生数は1,363人に対し、教員数は1,877人、職員数は3,327人(うち医療系職員が2,752人)となっている。

一般社団法人至誠会(以下「至誠会」と略称する)は、女子医大の同窓会組織であり、前身である社団法人至誠会は、東京女醫學校創立者吉岡彌生により寄贈された資産を基に、「社会事業・公衆衛生に関する諸般の施設及び運営をなし、国民福祉の増進を図ること」を目的とし、東京女醫學校、東京女子医学専門学校、女子医大の卒業生を会員とした同窓会組織として、1926年に公益法人として登録され、2011年、一般社団法人に移行したものである。2024年3月末現在、女子医大同窓会として47都道府県に支部を有し、正会員約4,600名、準会員668名を有している。

 

【第三者委員会による調査報告書の概要】

1 第三者委員会設置の経緯

2024年3月29日、女子医大は、「本学関係者の皆様へ」というお知らせをリリースして、警視庁による捜索が行われたことを公表した。報道によれば、女子医大の同窓会組織である至誠会から、勤務実態が認められない職員に対し給与が支払われていた、又は、職員が別の会社で働き始めた後も二重に給与が支払われていたなどという容疑で、警視庁が、女子医大などの関係各所に一斉捜索(強制捜査)を行ったとのことであった。

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連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第150回 ※クリックするとご覧いただけます。

第151回~

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

関連書籍

「おかしな数字」をパッと見抜く会計術

公認会計士 山岡信一郎 著

適時開示からみた監査法人の交代理由

公認会計士 鈴木広樹 著

徹底解説 課税上のグレーゾーン

辻・本郷税理士法人 監修 辻・本郷税理士法人 関西審理室 編 税理士 山本秀樹 著

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EY新日本有限責任監査法人 編 EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 編

企業戦略としての役員報酬

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気候変動リスクと会社経営 はじめの一歩

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法務コンプライアンス実践ガイド

弁護士・青山学院大学法学部教授 浜辺陽一郎 著

企業法務で知っておくべき税務上の問題点100

弁護士・税理士 米倉裕樹 著 弁護士・税理士 中村和洋 著 弁護士・税理士 平松亜矢子 著 弁護士 元氏成保 著 弁護士・税理士 下尾裕 著 弁護士・税理士 永井秀人 著

仮装経理の実務対応

税理士 鈴木清孝 著

不正会計リスクにどう立ち向かうか!

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