公開日: 2025/04/10 (掲載号:No.614)
文字サイズ

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第167回】株式会社ナ・デックス「特別調査委員会調査報告書(公開版)(2025年2月14日付)」

筆者: 米澤 勝

〔会計不正調査報告書を読む〕

【第167回】

株式会社ナ・デックス

「特別調査委員会調査報告書(公開版)(2025年2月14日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【株式会社ナ・デックス特別調査委員会の概要】

〔適時開示〕

〔調査委員会の構成〕

【委員長】

矢崎信也(弁護士 ひのき綜合法律事務所)

【副委員長】

加藤克彦(公認会計士 加藤克彦公認会計士税理士事務所)

【委 員】

菅沼勝己(弁護士 弁護士法人御園総合法律事務所)

村瀬俊高(弁護士 異相・村瀬法律事務所)

貝沼宏徳(弁護士 ひのき綜合法律事務所)

〔調査期間〕

2024年12月から2025年2月初旬まで

〔調査委員会の目的〕

 業務委託社員が架空の商品を対象とする循環取引及び架空の在庫の正規取引への付替えを行っていた疑惑(本事案)に係る事実関係の調査

 本事案に類似する事案の有無の調査

 本事案に関する連結財務諸表への影響額の確定

 本事案が発生した原因の分析と再発防止策の提言

〔調査結果〕

 

【株式会社ナ・デックスの概要】

株式会社ナ・デックス(以下「ナ・デックス」と略称する)は、1950(昭和25)年10月設立。設立時の社名は株式会社名古屋電元社。1992(平成4)年5月、現社名に商号変更。接合機器の開発、製造、販売、取付工事及び接合材料の販売を主たる事業とし、子会社15社、関連会社3社を有して、日本国内、北米、中国及び東南アジアで事業展開を行っている。

連結売上高34,436百万円、連結経常利益1,213万円、資本金1,028百万円。従業員数835名(訂正前の2024年4月期連結実績)。本店所在地は愛知県名古屋市中区。東京証券取引所スタンダード市場上場。会計監査人は、有限責任監査法人トーマツ名古屋事務所。

 

【特別調査委員会による調査報告書の概要】

1 特別調査委員会設置の経緯

(1) ナ・デックス北九州営業所は、2024年11月14日、仕入先のC社から、6,517万200円の売掛代金の請求を受け、北九州営業所長は、事務職員からの報告により、上記請求の事実を知り、C社関係者と面談したところ、商品の流通経路がC社→ナ・デックス→A社であることを確認した上で、A社に対し、注文書の発行と商品の検収を依頼した。

(2) 当初、A社の担当者からは、遅くとも2024年12月中には検収できるよう対応する旨の回答があったところ、11月19日になって、同担当者よりC社からの請求に対応したナ・デックスとA社との取引はまったく実態がなく、商品がA社に納品された事実はないとの連絡があり、不正な疑いのある取引の存在が発覚した。

(3) そこで、ナ・デックスは、A社向けの仕入に関し、C社以外の仕入先との取引についても調査したところ、C社の他にもD社及びB社からの仕入も実態がない不正な取引である可能性が浮上したため、取引を担当していた北九州営業所の業務委託社員であるXにヒアリングを実施したところ、A社向けの取引については、循環取引であることを認めた。

(4) ナ・デックスは、本件循環取引の発覚によって2024年度の事業実績の一部に疑義が生じたことを受け、実態解明等を目的とした特別調査委員会を立ち上げ、外部の委員も含む当委員会のメンバー主導で調査を行うこととした。

(5) 疑惑の詳細の把握や、その他の類似事案の有無の調査を進めていく中で、新たに、Xによる架空の在庫(原価)の正規取引への付替や、仕入商品の領得疑惑などが発覚したことから、ナ・デックスは当初の2025年4月期第2四半期の決算発表を延期(2025年2月14日提出期限)し、これら新たに発覚した疑惑についても、特別調査委員会による追加調査を行うこととした。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員登録およびログインが必要です。
通常、Profession Journalの記事閲覧はプレミアム会員専用のサービスですので、プレミアム会員でのご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

〔会計不正調査報告書を読む〕

【第167回】

株式会社ナ・デックス

「特別調査委員会調査報告書(公開版)(2025年2月14日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【株式会社ナ・デックス特別調査委員会の概要】

〔適時開示〕

〔調査委員会の構成〕

【委員長】

矢崎信也(弁護士 ひのき綜合法律事務所)

【副委員長】

加藤克彦(公認会計士 加藤克彦公認会計士税理士事務所)

【委 員】

菅沼勝己(弁護士 弁護士法人御園総合法律事務所)

村瀬俊高(弁護士 異相・村瀬法律事務所)

貝沼宏徳(弁護士 ひのき綜合法律事務所)

〔調査期間〕

2024年12月から2025年2月初旬まで

〔調査委員会の目的〕

 業務委託社員が架空の商品を対象とする循環取引及び架空の在庫の正規取引への付替えを行っていた疑惑(本事案)に係る事実関係の調査

 本事案に類似する事案の有無の調査

 本事案に関する連結財務諸表への影響額の確定

 本事案が発生した原因の分析と再発防止策の提言

〔調査結果〕

 

【株式会社ナ・デックスの概要】

株式会社ナ・デックス(以下「ナ・デックス」と略称する)は、1950(昭和25)年10月設立。設立時の社名は株式会社名古屋電元社。1992(平成4)年5月、現社名に商号変更。接合機器の開発、製造、販売、取付工事及び接合材料の販売を主たる事業とし、子会社15社、関連会社3社を有して、日本国内、北米、中国及び東南アジアで事業展開を行っている。

連結売上高34,436百万円、連結経常利益1,213万円、資本金1,028百万円。従業員数835名(訂正前の2024年4月期連結実績)。本店所在地は愛知県名古屋市中区。東京証券取引所スタンダード市場上場。会計監査人は、有限責任監査法人トーマツ名古屋事務所。

 

【特別調査委員会による調査報告書の概要】

1 特別調査委員会設置の経緯

(1) ナ・デックス北九州営業所は、2024年11月14日、仕入先のC社から、6,517万200円の売掛代金の請求を受け、北九州営業所長は、事務職員からの報告により、上記請求の事実を知り、C社関係者と面談したところ、商品の流通経路がC社→ナ・デックス→A社であることを確認した上で、A社に対し、注文書の発行と商品の検収を依頼した。

(2) 当初、A社の担当者からは、遅くとも2024年12月中には検収できるよう対応する旨の回答があったところ、11月19日になって、同担当者よりC社からの請求に対応したナ・デックスとA社との取引はまったく実態がなく、商品がA社に納品された事実はないとの連絡があり、不正な疑いのある取引の存在が発覚した。

(3) そこで、ナ・デックスは、A社向けの仕入に関し、C社以外の仕入先との取引についても調査したところ、C社の他にもD社及びB社からの仕入も実態がない不正な取引である可能性が浮上したため、取引を担当していた北九州営業所の業務委託社員であるXにヒアリングを実施したところ、A社向けの取引については、循環取引であることを認めた。

(4) ナ・デックスは、本件循環取引の発覚によって2024年度の事業実績の一部に疑義が生じたことを受け、実態解明等を目的とした特別調査委員会を立ち上げ、外部の委員も含む当委員会のメンバー主導で調査を行うこととした。

(5) 疑惑の詳細の把握や、その他の類似事案の有無の調査を進めていく中で、新たに、Xによる架空の在庫(原価)の正規取引への付替や、仕入商品の領得疑惑などが発覚したことから、ナ・デックスは当初の2025年4月期第2四半期の決算発表を延期(2025年2月14日提出期限)し、これら新たに発覚した疑惑についても、特別調査委員会による追加調査を行うこととした。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員登録およびログインが必要です。
通常、Profession Journalの記事閲覧はプレミアム会員専用のサービスですので、プレミアム会員でのご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第150回 ※クリックするとご覧いただけます。

第151回~

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

関連書籍

「おかしな数字」をパッと見抜く会計術

公認会計士 山岡信一郎 著

適時開示からみた監査法人の交代理由

公認会計士 鈴木広樹 著

徹底解説 課税上のグレーゾーン

辻・本郷税理士法人 監修 辻・本郷税理士法人 関西審理室 編 税理士 山本秀樹 著

不正・誤謬を見抜く実証手続と監査実務

EY新日本有限責任監査法人 編

先進事例と実践 人的資本経営と情報開示

EY新日本有限責任監査法人 編 EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 編

企業戦略としての役員報酬

弁護士 中西和幸 著

気候変動リスクと会社経営 はじめの一歩

公認会計士 石王丸周夫 著

ドローン・ビジネスと法規制

森・濱田松本法律事務所 AI・IoTプラクティスグループ 編 弁護士 戸嶋浩二 編集代表 弁護士 林 浩美 編集代表 弁護士 岡田 淳 編集代表

法務コンプライアンス実践ガイド

弁護士・青山学院大学法学部教授 浜辺陽一郎 著

企業法務で知っておくべき税務上の問題点100

弁護士・税理士 米倉裕樹 著 弁護士・税理士 中村和洋 著 弁護士・税理士 平松亜矢子 著 弁護士 元氏成保 著 弁護士・税理士 下尾裕 著 弁護士・税理士 永井秀人 著

仮装経理の実務対応

税理士 鈴木清孝 著

不正会計リスクにどう立ち向かうか!

公認会計士・公認不正検査士 宇澤亜弓 著

記事検索

メルマガ

メールマガジン購読をご希望の方は以下に登録してください。

#
#