公開日: 2026/05/14 (掲載号:No.668)
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〔会計不正調査報告書を読む〕 【第185回】KDDI株式会社「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2026年3月31日付)」

筆者: 米澤 勝

〔会計不正調査報告書を読む〕

【第185回】

KDDI株式会社

「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2026年3月31日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【KDDI株式会社特別調査委員会による調査の概要】

【適時開示】

【特別調査委員会の構成】

【委員長】

名取俊也(弁護士 新丸の内総合法律事務所)

【委 員】

辺 誠祐(弁護士 長島・大野・常松法律事務所)

佐藤保則(公認会計士 合同会社デロイトトーマツ)

【調査補助者】

新丸の内総合法律事務所所属の弁護士:横井朗

長島・大野・常松法律事務所所属の弁護士:小川聖史、伊藤昌夫、天井周平、一色健太、高野紘輝、湯浅諭、八木拡、御手洗伸、今野恵一朗、持永勇揮、初馬眞人、高井志穂、畑和貴、梶原知茂、菅紀世美、野村琴音

合同会社デロイトトーマツ:清水和之(米国公認会計士・公認不正検査士)、岡田大輔(公認不正検査士)、他公認会計士等 21名

〔調査期間〕

2026年1月14日から同年3月31日まで

〔特別調査委員会による調査の目的〕

(1) 本件の事実関係の解明

(2) 本件による連結財務諸表への影響の有無及び影響額の検討

(3) 本件に類似する事案の有無の確認

(4) 本件が生じた原因の分析と再発防止策の提言

(5) その他、本委員会が必要と認めた事項

〔調査結果〕

 

【KDDI株式会社の概要】

KDDI株式会社(以下、報告書の表記と同じく「KDDI」と略称する)は、「第二電電企画株式会社」として、1984年1月に設立。商号変更、合併などを経た後、2001年4月から現商号。携帯電話の契約数はNTTドコモに次ぎ国内第2位。連結子会社189社(国内129社、海外60社)、持分法適用会社及び共同支配企業47社(国内38社、海外9社)により企業集団を構成している。売上高5,917,953百万円、税引前当期利益1,104,625百万円、資本金141,852百万円、従業員数64,636人(いずれも訂正前2025年3月期連結実績)。本店所在地は東京都新宿区。東京証券取引所プライム市場上場。会計監査人は、PwC JAPAN有限責任監査法人東京事務所(以下、「PwC」と略称する)。

会計不正が発覚したのは、KDDIの連結子会社であるビッグローブ株式会社(以下、「ビッグローブ」と略称する)とビッグローブの子会社であるジー・プラン株式会社(以下「ジー・プラン」と略称する)であった。

ビッグローブは、日本電気株式会社(NEC)においてインターネットサービス等を提供していた BIGLOBE事業部門が分社独立する形で 2006年7月に設立。BIGLOBEブランドを運営するインターネットサービスプロバイダとして、モバイル・固定通信サービスを提供する通信事業を主たる事業としてきた。2017年1月に KDDIの完全子会社となった後、2022年度からトラベル事業等の新規事業(リアライズ事業)への進出を本格的に開始し、2022年12月、新規事業への進出の一環として、自社の企業規模や信用力等を活用して子会社であるジー・プランの広告代理事業を更に拡大するため、広告代理事業に参入している。売上高145,965百万円、うち広告代理事業売上高7,493百万円(いずれも訂正前の2025年3月期実績)。

ジー・プランは、株式会社博報堂、住友商事株式会社及び三井住友カード株式会社の合弁会社として2001年2月に設立。ポイント事業、メディア事業、ポイントプラットフォーム事業及び広告代理事業を主たる事業とする。2011年3月にビッグローブの子会社となり、2017年1月にビッグローブがKDDIの完全子会社となったことに伴い、KDDIグループに加わった。売上高82,377百万円、うち広告代理事業売上高75,717百万円(いずれも訂正前の2025年3月期実績)。

ジー・プランにおける広告代理事業は、2010年12月にジー・プランに入社したa氏が、前職での経験を活かして、2017年度に立ち上げたものであり、a氏は、2022年4月から副部長、2023年4月から部長の役職に就いていた。

【架空循環取引発覚までの経緯】

2018年 2月、a氏主導で開始したジー・プランの広告代理事業での数十万円の赤字発生及び数千万円単位の売上目標未達による焦りから、赤字補填及び売上目標達成のために架空売上の計上を考える
8月、遅くともこの時期から本件架空循環取引を開始
2020年 4月、広告代理事業増員のため、b氏がジー・プランに入社
2022年 12月、ビッグローブの新規事業開拓を企図し、同社が関与する商流を介しKDDIのグループファイナンスを活用
2023年 1月、a氏及びb氏がビッグローブに兼務出向
2025年 取引金額の増加とともに架空循環取引に係る代理店数が拡大(計21社)
2025年 2月、経営戦略会議で、KDDI代表取締役社長(当時)が「広告代理事業の急成長は不自然」と懸念を表明したことに伴い、ビッグローブ、ジー・プランの広告代理事業の管理体制強化として、社内監査役と内部監査部門により取引の妥当性に関する調査を実施(以下は、「特別調査委員会設置の経緯」のとおり)

 

【特別調査委員会による調査結果報告書の概要】

1 特別調査委員会設置の経緯

KDDIは、2025年度の監査役監査において、連結子会社であるビッグローブ及びビッグローブの子会社であるジー・プランの広告代理事業における取引の妥当性について、社内監査役及び内部監査部による予備調査を実施し、その過程で、2025年10月、会計監査人であるPwCから、ジー・プランの広告代理事業において不適切な取引が行われていた疑いがある旨の指摘を受けたことを踏まえ、外部の公認会計士も交えた社内調査を実施した。

これらの調査では、不適切な取引の存在を裏付ける客観的な証拠や関係者の供述は得られなかったが、2025年12月中旬、一部の広告代理店からジー・プランに対する入金が遅延したことを契機として、不適切な取引を実行していた子会社従業員による自認が得られ、これを受けて、売上高等が過大に計上されていた可能性が判明した。

さらに、KDDIは、外部の弁護士及び公認会計士を交えた社内調査チームを設置し、追加調査を実施した結果、2026年1月上旬、客観的な証拠が確認され、広告代理事業において、子会社の従業員が関与し、広告運用の実体のない架空循環取引が行われていた疑いの存在が確認された。

これを受け、KDDIは、本件に関する事実関係やその原因等を解明するため、より専門性及び客観性の高い調査を実施する必要があると判断し、2026年1月14日、取締役会において、外部の弁護士及び公認会計士を委員とする特別調査委員会を設置することを決定し、調査を委託した。

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第185回】

KDDI株式会社

「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2026年3月31日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

【KDDI株式会社特別調査委員会による調査の概要】

【適時開示】

【特別調査委員会の構成】

【委員長】

名取俊也(弁護士 新丸の内総合法律事務所)

【委 員】

辺 誠祐(弁護士 長島・大野・常松法律事務所)

佐藤保則(公認会計士 合同会社デロイトトーマツ)

【調査補助者】

新丸の内総合法律事務所所属の弁護士:横井朗

長島・大野・常松法律事務所所属の弁護士:小川聖史、伊藤昌夫、天井周平、一色健太、高野紘輝、湯浅諭、八木拡、御手洗伸、今野恵一朗、持永勇揮、初馬眞人、高井志穂、畑和貴、梶原知茂、菅紀世美、野村琴音

合同会社デロイトトーマツ:清水和之(米国公認会計士・公認不正検査士)、岡田大輔(公認不正検査士)、他公認会計士等 21名

〔調査期間〕

2026年1月14日から同年3月31日まで

〔特別調査委員会による調査の目的〕

(1) 本件の事実関係の解明

(2) 本件による連結財務諸表への影響の有無及び影響額の検討

(3) 本件に類似する事案の有無の確認

(4) 本件が生じた原因の分析と再発防止策の提言

(5) その他、本委員会が必要と認めた事項

〔調査結果〕

 

【KDDI株式会社の概要】

KDDI株式会社(以下、報告書の表記と同じく「KDDI」と略称する)は、「第二電電企画株式会社」として、1984年1月に設立。商号変更、合併などを経た後、2001年4月から現商号。携帯電話の契約数はNTTドコモに次ぎ国内第2位。連結子会社189社(国内129社、海外60社)、持分法適用会社及び共同支配企業47社(国内38社、海外9社)により企業集団を構成している。売上高5,917,953百万円、税引前当期利益1,104,625百万円、資本金141,852百万円、従業員数64,636人(いずれも訂正前2025年3月期連結実績)。本店所在地は東京都新宿区。東京証券取引所プライム市場上場。会計監査人は、PwC JAPAN有限責任監査法人東京事務所(以下、「PwC」と略称する)。

会計不正が発覚したのは、KDDIの連結子会社であるビッグローブ株式会社(以下、「ビッグローブ」と略称する)とビッグローブの子会社であるジー・プラン株式会社(以下「ジー・プラン」と略称する)であった。

ビッグローブは、日本電気株式会社(NEC)においてインターネットサービス等を提供していた BIGLOBE事業部門が分社独立する形で 2006年7月に設立。BIGLOBEブランドを運営するインターネットサービスプロバイダとして、モバイル・固定通信サービスを提供する通信事業を主たる事業としてきた。2017年1月に KDDIの完全子会社となった後、2022年度からトラベル事業等の新規事業(リアライズ事業)への進出を本格的に開始し、2022年12月、新規事業への進出の一環として、自社の企業規模や信用力等を活用して子会社であるジー・プランの広告代理事業を更に拡大するため、広告代理事業に参入している。売上高145,965百万円、うち広告代理事業売上高7,493百万円(いずれも訂正前の2025年3月期実績)。

ジー・プランは、株式会社博報堂、住友商事株式会社及び三井住友カード株式会社の合弁会社として2001年2月に設立。ポイント事業、メディア事業、ポイントプラットフォーム事業及び広告代理事業を主たる事業とする。2011年3月にビッグローブの子会社となり、2017年1月にビッグローブがKDDIの完全子会社となったことに伴い、KDDIグループに加わった。売上高82,377百万円、うち広告代理事業売上高75,717百万円(いずれも訂正前の2025年3月期実績)。

ジー・プランにおける広告代理事業は、2010年12月にジー・プランに入社したa氏が、前職での経験を活かして、2017年度に立ち上げたものであり、a氏は、2022年4月から副部長、2023年4月から部長の役職に就いていた。

【架空循環取引発覚までの経緯】

2018年 2月、a氏主導で開始したジー・プランの広告代理事業での数十万円の赤字発生及び数千万円単位の売上目標未達による焦りから、赤字補填及び売上目標達成のために架空売上の計上を考える
8月、遅くともこの時期から本件架空循環取引を開始
2020年 4月、広告代理事業増員のため、b氏がジー・プランに入社
2022年 12月、ビッグローブの新規事業開拓を企図し、同社が関与する商流を介しKDDIのグループファイナンスを活用
2023年 1月、a氏及びb氏がビッグローブに兼務出向
2025年 取引金額の増加とともに架空循環取引に係る代理店数が拡大(計21社)
2025年 2月、経営戦略会議で、KDDI代表取締役社長(当時)が「広告代理事業の急成長は不自然」と懸念を表明したことに伴い、ビッグローブ、ジー・プランの広告代理事業の管理体制強化として、社内監査役と内部監査部門により取引の妥当性に関する調査を実施(以下は、「特別調査委員会設置の経緯」のとおり)

 

【特別調査委員会による調査結果報告書の概要】

1 特別調査委員会設置の経緯

KDDIは、2025年度の監査役監査において、連結子会社であるビッグローブ及びビッグローブの子会社であるジー・プランの広告代理事業における取引の妥当性について、社内監査役及び内部監査部による予備調査を実施し、その過程で、2025年10月、会計監査人であるPwCから、ジー・プランの広告代理事業において不適切な取引が行われていた疑いがある旨の指摘を受けたことを踏まえ、外部の公認会計士も交えた社内調査を実施した。

これらの調査では、不適切な取引の存在を裏付ける客観的な証拠や関係者の供述は得られなかったが、2025年12月中旬、一部の広告代理店からジー・プランに対する入金が遅延したことを契機として、不適切な取引を実行していた子会社従業員による自認が得られ、これを受けて、売上高等が過大に計上されていた可能性が判明した。

さらに、KDDIは、外部の弁護士及び公認会計士を交えた社内調査チームを設置し、追加調査を実施した結果、2026年1月上旬、客観的な証拠が確認され、広告代理事業において、子会社の従業員が関与し、広告運用の実体のない架空循環取引が行われていた疑いの存在が確認された。

これを受け、KDDIは、本件に関する事実関係やその原因等を解明するため、より専門性及び客観性の高い調査を実施する必要があると判断し、2026年1月14日、取締役会において、外部の弁護士及び公認会計士を委員とする特別調査委員会を設置することを決定し、調査を委託した。

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連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第150回 ※クリックするとご覧いただけます。

第151回~

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

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