〔会計不正調査報告書を読む〕
【第131回】
東京産業株式会社
「特別調査委員会調査報告書(2022年7月28日付)」
税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝
【東京産業株式会社特別調査委員会の概要】
〔適時開示〕
- 2022年5月13日
「特別損失の発生に関するお知らせ」 - 同年5月26日
「特別調査委員会設置に関するお知らせ」 - 同年6月28日
「特別調査委員会の構成の一部変更に関するお知らせ」
〔特別調査委員会〕
【委員長】
神垣 清水(弁護士、日比谷総合法律事務所)
【委 員】
福崎 聖子(東京産業株式会社社外取締役(監査等委員)、弁護士、福崎法律事務所)
井崎 淳二(弁護士、オリゾン法律事務所)
安藤 豪(弁護士、あけぼのパートナーズ法律事務所)
大下 良仁(弁護士、弁護士法人琴平綜合法律事務所)
佐々木 洋平(公認会計士、佐々木公認会計士事務所)
委員会設置当初は、委員として、東海林秀樹(公認会計士、縁監査法人)が選任されていたが、同氏が代表を務める法人との間で取引関係があったことが判明し、特別調査委員会の独立性、中立性に一切の疑義を生じさせないようにするため、辞任の申し出があり、後任に佐々木洋平委員を選任した。
委員会は、会社と利害関係のない以下の外部専門家を調査担当者として起用している。
河合 健一(公認会計士、公認会計士河合健一事務所)
飯田 夏希(公認会計士、飯田夏希公認会計士事務所)
井上 直樹(公認会計士、井上直樹公認会計士事務所)
他、公認会計士1名
また、デジタル・フォレンジック調査等の支援のため、株式会社FRONTEOに所属する専門家の支援を受けた。
〔調査期間〕
2022年5月26日から同年7月28日まで
〔特別調査委員会の目的〕
(1) 本件に係る事実関係の調査
(2) 本件に類似する事象の有無の調査
(3) 本件が事実であると判明した場合、その影響額の算定
(4) 本件が事実であると判明した場合、その原因の究明及び再発防止策の提言
(5) 上記各号の事項を遂行した結果に基づく調査報告書の作成、及びその調査報告書の当社への提出
(6) その他、当委員会が必要と認めた事項
〔調査結果〕
- 2022年7月28日
「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」 - 同年7月29日
「2022年3月期有価証券報告書および過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出、並びに2022年3月期決算短信の訂正に関するお知らせ」
【東京産業株式会社の概要】
東京産業株式会社(以下「東京産業」と略称する)は、1942年4月設立(設立時の社名は大和機械株式会社)。東京建材工業株式会社への商号変更を経て、1947年7月、三菱商事株式会社機械部有志が経営権を譲り受ける形で東京産業株式会社に商号を変更し、同年10月に一般産業機械及び器具類の国内販売、輸出入を業とする機械専門商社として新発足。各種機械・プラント・資材・工具・薬品などの国内販売及び貿易取引を主たる事業内容とする。売上高58,872百万円、経常利益2,625百万円、資本金3,443百万円。従業員数312名(2022年3月期実績)。三菱重工業株式会社が発行済株式の14.85%を所有する筆頭株主である。本店所在地は東京都千代田区。東京証券取引所プライム市場上場。会計監査人は有限責任あずさ監査法人東京事務所(以下「あずさ監査法人」と略称する)。
【特別調査委員会調査報告書の概要】
1 特別調査委員会設置の経緯
東京産業は、2022年1月17日から開始した東京国税局による税務調査の過程において、営業第三本部プラントインフラ機器部国際インフラ課所属(当時)のX氏が関与する一部取引について、4月下旬に、取引の実体に疑義のある売上等が存在する(本件架空取引疑義)との指摘を受け、社内調査を実施したところ、販売取引の一部において計上根拠の確認できない取引があったほか、一部の仕入先に対して実体の伴わない送金を行っていたことが判明した。
これに伴い、東京産業は、2022年3月期決算において、実体が伴わないと考えられる売上高及び売上原価についてはこれを取り消すとともに、支払済の金額528百万円については回収可能性が現時点では見込まれないことからその全額について貸倒引当金を計上し、貸倒引当金繰入額を特別損失として処理した上で、同年5月13日付でこれを適時開示した。
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