〔会計不正調査報告書を読む〕
【第159回】
学校法人東京女子医科大学
「第三者委員会調査報告書(公表版)(2024年8月2日付)」
(前編)
税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝
【学校法人東京女子医科大学第三者委員会の概要】
〔お知らせ〕
- 2024年4月19日
「第三者委員会の設置について」
〔第三者委員会の構成〕
【委員長】
山上 秀明(弁護士・元最高検察庁次長検事)
【副委員長】
竹内 朗(弁護士・公認不正検査土、プロアクト法律事務所)
【委 員】
三木 義一(弁護士・元青山学院大学学長)
清水 真一郎(弁護士・公認不正検査士、渥美坂井法律事務所)
【調査補助者】
渥美坂井法律事務所・外国法共同事業
土居文代、宮西啓介、船橋桃子、粟野記代、瀬川慶、西尾順一、及川泰輔、幕田怜輔、安中允彦、金田耕一の合計10名の弁護土ほかパラリーガル
A&S福岡法律事務所弁護士法人
磯部慎吾、柴田啓介、杉本賢太、光山夏貴の合計4名の弁護士
プロアクト法律事務所
池永朝昭、徳山佳祐、田中伸英、岩渕恵理、神田詠守、中島永祥の合計6名の弁護士
太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社
垂水敬、前村浩介、今枝侑子、芝啓真、大園和登、その他の合計58名の公認会計士、公認不正検査士等
〔調査期間〕
2024年4月10日から7月31日まで
〔第三者委員会への委嘱事項〕
(1) 出向者に対する二重給与その他不正支出の有無及びその状況の調査
(2) 上記(1)に関する内部統制ないしガバナンス上の問題の有無及びその状況の調査
(3) 上記(1)及び(2)に問題が認められた場合、その原因分析及び再発防止策の提言等
〔調査結果〕
- 2024年7月31日
「第三者委員会による調査報告書の受領について」 - 同年8月2日
「第三者委員会による調査報告書の公表について」
【学校法人東京女子医科大学の概要】
学校法人東京女子医科大学(以下、「女子医大」と略称する)は、1900年、創立者である吉岡彌生によって、東京女醫學校として創立され、1951年に学校法人東京女子医科大学として認可された。教育機関として、大学及び大学院のほか、看護専門学校を持つとともに、東京女子医科大学病院のほか4箇所の医療センター等を傘下に有している。日本で唯一の女子医科大学である。調査報告書公表時点の理事長は岩本絹子氏(以下「岩本理事長」と略称する)。公表されている「令和5年度事業報告書」によれば、教育活動収入82,459百万円に対して教育活動支出は88,571百万円で、収支差額は△6,112百万円。2023年度収支差額についても△9,301百万円と、一般事業会社でいうところの「赤字経営」となっている。2023年5月1日現在の学生数は1,363人に対し、教員数は1,877人、職員数は3,327人(うち医療系職員が2,752人)となっている。一般社団法人至誠会(以下「至誠会」と略称する)は、女子医大の同窓会組織であり、前身である社団法人至誠会は、東京女醫學校創立者吉岡彌生により寄贈された資産を基に、「社会事業・公衆衛生に関する諸般の施設及び運営をなし、国民福祉の増進を図ること」を目的とし、東京女醫學校、東京女子医学専門学校、女子医大の卒業生を会員とした同窓会組織として、1926年に公益法人として登録され、2011年、一般社団法人に移行したものである。2024年3月末現在、女子医大同窓会として47都道府県に支部を有し、正会員約4,600名、準会員668名を有している。
【第三者委員会による調査報告書の概要】
1 第三者委員会設置の経緯
2024年3月29日、女子医大は、「本学関係者の皆様へ」というお知らせをリリースして、警視庁による捜索が行われたことを公表した。報道によれば、女子医大の同窓会組織である至誠会から、勤務実態が認められない職員に対し給与が支払われていた、又は、職員が別の会社で働き始めた後も二重に給与が支払われていたなどという容疑で、警視庁が、女子医大などの関係各所に一斉捜索(強制捜査)を行ったとのことであった。
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